10.
「さっきから気になっていたけど、顔色悪いね? 具合が悪いの?」
「まぁ⋯⋯そんなところ」
「あ、そうだったの! 具合悪いのに無理させてごめんね。⋯⋯今日は止めておく?」
「いや⋯⋯」
「えぇー⋯⋯もうおかえりになるのですか? しょーやさまのぐあいがわるいのなら、しょうがないですけど⋯⋯」
祥也の世話係──と、自負している──として、ご主人を優先に気を遣ってはいるが、まだ子どもらしい、初めての遊園地に行きたがっている本音が大きく見えた。
ジルヴァの期待を裏切ってはならない。
そう思った祥也は、「大丈夫だ」と己を言い聞かせるように言った。
「⋯⋯ちょっと休めば良くなるだろう」
「でも⋯⋯」
「しょーやさま、むりせずにっ」
「ジルヴァは遊園地というものに行ったことがなかっただろう。だから、無理してでも行かせてやりたい」
「久須君⋯⋯」
詩織は何か言いたげに口を開いたが、やがて「分かった」と言った。
「そうだよね。初めてのところには行かせたいよね。だけど、本当に具合が悪かったら、ちゃんと言って。その時は帰るから」
両手をぐっと握り拳をした詩織がどこかやる気満々な顔をした。
これは有無を言わさず、引きずってでも連れて帰らされそうだと内心引き気味でいた。
「じゃあ、そうと決まったら、無理せず楽しみましょう」
「はい!」
ジルヴァに顔を向けた詩織がごく自然とその小さな手を繋いだことに、意味もなく驚きつつも、ジルヴァの反対の手を繋いで入場口へと赴いた。
ジルヴァの手を繋いだ時、詩織がこっそりと見てはほんのりと頬を赤らめたことに気づかずに。
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