9.
嫌になるほど晴天の下、賑やかな声達がファンシーな動物をあしらった門へと吸い込まれるように入っていく横で、楽しみで仕方なくて、祥也の手のひらの下にし、それを軸にして踊り回るジルヴァのことを見ていながらも、来て早々帰りたくて仕方ないという気持ちが溢れていた。
匡が言うデート先は、遊園地だった。
遊園地も夏祭りと同様、憶えているかいないかの年頃に行ったきりで今回初めてと言っても過言ではない。
こんなところ行っても楽しいのか。
さっきから家族連れしか見てないとぼんやりと眺めていると、その家族連れに紛れるように何組かのカップルを見かけた。
そして、その次に見たのは彼氏の腕に絡める姿。
確か、匡もカップルになったらああいうことをするんだとか何とか言っていたような気がする。
あんなことをする自分が全くもって想像ができなく、その前に気持ち悪くて吐きそうだ。
休日であるから、余計に人が多いのであろう。早くも人酔いしかけている祥也に、一人の女子がこちらにやってくるのが見えた。
と、祥也の前に来るなり、首を傾げた。
「⋯⋯久須君、だよね?」
「ジルヴァもいます!」
「そうなんだよね⋯⋯。ジルヴァ君がいるからそうだと思ったんだけど⋯⋯」
声を掛けてきたのは、詩織だった。
あの時も恐らく人並みに身だしなみをきちんとしていたが、判断材料であった髪型が変わっていたために誰だか分からなかった。
だから、自分も分からなかったが、「分からなかったのか」と思わず声に出ていた。
「だって、あの時とは違うんだもん。⋯⋯あ、違うっていうのはね⋯⋯えと、えと⋯⋯カッコイイって意味で⋯⋯」
「⋯⋯カッコイイ⋯⋯」
夏祭りの出来事が思い出される。
匡も人よりも顔がいいと言って、あの時のように今回もきちんとした格好をさせられた。
本当はできることならば、目立たない格好がしたいところだ。
今も周りの視線を痛いほど感じる。
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