8.
「デート?」
「そう! デートってド直球には言ってないけどさ、こっちから誘って、相手がその気があるのならそう思うじゃん! ってことで、来週、兄貴の休み──」
「デートってなんだ」
表情が固まった。
ジルヴァも「でーとってなんですか?」と復唱するように言うと、「嘘だろ⋯⋯」と信じられないという顔をした。
「この世でその言葉を知らない未知の生命体がいんのかよ」
「仮にもお前の兄である相手に、そんな呼ばれ方をするとは」
「いや、だって、そこまで知らないとか思わなかったし」
「一応言葉は知ってる。だが、どうしてそんな言い方をするのか意味が分からない」
「あー⋯⋯なーる⋯⋯」
ぽかーんと口を開けて天を仰ぐ弟を尻目に、「でーとってなんですかっ!」とあぐらの上で座っていたジルヴァが服を引っ張ってまで訊いているのを、「恐らく⋯⋯」と言って、多分こういうのだろうという説明をしていると、「決めた!」と声を上げた。
「来週までに、兄貴にデートというのは何たるか徹底的に教えてやるっ!」
「⋯⋯面倒くさい」
「面倒くさがるな! デートの約束をしちまっているんだからっ!」
「それは、お前が勝手に人の携帯で勝手に約束をしたんだろう」
「でーとっ!」
「兄貴よりもジルヴァの方がやる気満々じゃないか! やる気があっていいぞ、ジルヴァ」
「ジルヴァに行かせた方がいいんじゃないか」
その独り言のようなことも聞こえてしまったらしい。匡が輪をかけて怒り、そしてそのままデートの心得を延々と言うのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます