7.

首を傾げる祥也に、「ほら!」と今度は手を出してきた。


「何してんだ」

「何って、携帯と連絡先が書かれた紙! そういうのはさっさとやらねーと」

「お前がやるのか」

「その様子じゃ、兄貴はそのままにしておくつもりだろ。おれが代わりにやってやる!」


「ポケットに紙入れたままだと、洗濯しかねないし」と何かとぶつくさ文句言っている匡に、何だかよく分からないが、それで気が済むならと一旦ジルヴァを下ろした後、ポケットから紙と携帯端を渡した。

ジルヴァと両手をそれぞれ繋いでぶらぶら遊んでいると、何かポチポチと押している匡が「あのさ兄貴」と言ってきた。


「携帯、さすがに代えね?」

「なんでだ」

「いや、さすがにこの携帯はマズイだろ⋯⋯。てか、もう使えないって話じゃなかったっけ」

「別にオーナーとせめてお前ぐらいの連絡しか使わないものだ。代えても意味がないだろ」

「いや、うん⋯⋯いや、その彼女の前でこれを使うのはダサすぎる」


あの同級生のことを言っているのか。しかし、それと何の関係が。

深く考えている祥也を見た匡が、「いや、いいや。そのうち強制的に連れて行くから」と独り言にも似たことを言って、打ち続けていた。

どこにと疑問符を浮かべながらも聞かなかったことにした祥也は、手を繋いだままその場で跳ねたり、「おて!」や「ごはん!」と犬の真似事──あながち間違ってはいないが──をしているジルヴァの相手をしている時、「できた!」と声を上げる匡の方へ顔を向けた。


「ほら、兄貴。その水井詩織さんっていう人の連絡先とついでにデートの約束をしておいたから!」

「⋯⋯は?」


弟から携帯を受け取りつつ、片目を瞑り、親指を立てる匡に怪訝な顔をした。

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