5.
「やさしいかたでしたね」
家に帰ってきた時、ジルヴァはほっこりとした顔をしていた。
ジルヴァは絶滅危惧種の狼であり、特殊能力である優しい人の前でしか人間の姿にならない。そうやって、色んな"ごしゅじんさま"の元を転々としていたらしい。
「優しい⋯⋯だから、こんな俺に話しかけてきたのか」
「しょーやさまもやさしいからだとおもいます!」
すかさずそう言ってくれる言葉は、何度も自信満々に言ってくれる言葉だった。
「⋯⋯ジルヴァがそう言うなら」
頭を撫でてやると、ぴんと立っていた耳が垂れていった。
表情からして撫でられて嬉しいと思っているようだった。
上手く笑えているか分からない表情を向けていると、突然はっとした顔をした。
「どうした、ジルヴァ」
「まさしさまがかえってきます⋯⋯!」
「匡が?」
扉の方へ顔を向けるジルヴァと同じように向いていると、「ただいま〜」と扉を開けながら入ってくる弟の姿があった。
「おかえりなさい!」
「お、何で二人して出迎えてくれているの? もしかして、可愛い可愛い弟の帰りを首を長ーくして待ってくれていたのか!」
「違う断じて違う」
靴を脱ぎ捨てこちらに両手を広げて駆け寄って来る弟の脅威から、ジルヴァを抱き上げ、避けたことで回避した。
「いった〜! なんで避けるんだし!」
「危ないという以外に理由が?」
「兄貴、酷い! さっき無理やり外に出したことを根に持っているのか!」
「そうだな。ほぼ寝てないのに起こす方が酷い」
「ですが! しおりさまとあいましたー!」
「しおり⋯⋯さま⋯⋯?」
腕の中で弾んだ声を上げるジルヴァに匡が首を傾げていると、「しょーやさまとおなじぐらいやさしいかたです!」と答えになっていない答えを返した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます