4.

羨ましいと思ってしまった。

どんな形であれ、大学まで行かせてもらえるだなんて。

しかし、大学まで行かせてもらえたとしても、自分は何をしたかったのだろう。

今だって何の目的もなくただ生きている。


強いていうなら、ジルヴァと匡の世話?


「あの、久須君⋯⋯」

「まだなにか」

「あ、いや⋯⋯大したことじゃないけど、久須君が良ければ、なんだけど⋯⋯その⋯⋯」


指先同士を突っついてはもじもじとさせている。

何をしているのだろう。ジルヴァも「あたらしいあそびですか?」と言って、俯いている詩織のことを下から見上げていた。


「ううん、ジルヴァ君。遊びじゃないよ。⋯⋯あの、久須君の連絡先教えてっ!」


急な勢いに面食らった。


「⋯⋯連絡先⋯⋯? 俺なんかと?」


怪訝な顔をする祥也に、詩織はポケットから取り出した携帯端末を突きつけたまま、うんうんと大きく頷いた。


「⋯⋯えと、何かの縁だと思って⋯⋯。あ、あと、またジルヴァ君とお話ししたいなって思って」

「ぼくも! しおりさまともっとおはなししたいです!」


嬉しげにぴょんぴょんと飛び跳ねるジルヴァに、えへへと笑いかけていた。

自分なんかに連絡したい奴なんて匡ぐらいしかいないと思っていたが、やはりそうだったか。

充分に分かってはいたが、胸が少しばかり痛んだことに気づかないフリをした祥也は、携帯端末をポケットを取り出そうと手を伸ばした。が、そこで携帯端末を置いてきたことに気づいた。


「そういうことってあるよね! 私もネットで映画の座席を予約したのに、忘れてきちゃって無駄になったことがあるよ!」


早口気味にそう言ってきた。

最新の端末を持ってない祥也にとっては、詩織が何を言っているのか意味が分からないと内心首を傾げていると、わざわざ紙に連絡先を書いて渡してくれたのであった。

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