第5話 光る手鏡(3)

 少女は凍えそうな声で「あのー樅川藩の陣屋を探しているのですが、場所分かりますか?」と僕に訪ねてきた。僕は「はい。門を出て右に曲がると...」説明中に少女が寒さのあまり、倒れてしまった。慌てて僕は少女を抱えて部屋に運んだ火鉢を借りて部屋を暖めた。薄暗くて彼女の姿がよく見えなかったのでロウソクを付けてみた。高価な着物を着た少女であった。「こんなにも美しい方がなぜここに?」と思いながら、布団をかけようとした時、硬い石のようなものがあたった。不思議に思いながら僕はそっと彼女の袂から石のようなものを取り出してみた。すると硬い布のようなので覆われた長方形の石が出てきた。僕は最初、砥石と思ったが、砥石にしてはあまりにも綺麗なため、手鏡だと考えた。しかし、黒色の手鏡は映りがあまり良くないと感じた。「へぇーこんな形の鏡もあるのだな」と思いながらしばらく眺めていると突然鏡が光った。あまりの眩しさに思わず叫んでしまい、彼女が起きてしまった。彼女は起きた途端に「私のスマホに触らないでくださる?」と大声で僕に言いつけてきた。

「スマホ?この鏡のようなものですかな?」

「え、あなたスマホを存じ上げていないのですか?」

「はい、黒い砥石か手鏡だと思っていました。でもまさか光るなんてびっくりです。」

「今の時代にスマホを知らない人がいるのですね。」と言われたので僕は「北根島の方なら皆知らないと思いますよ。」と返事をした。

 その時、段々日も明るくなってきたため、私は他の僧侶達が起きる前に彼女を樅川陣屋まで送ることにした。


「寒いのでこれを着てください。」


「ありがとうございます。あなたは、そのような薄着で大丈夫でしょうか?」


「はい僕は平気です。寺の修行で暑さ、寒さに慣れておりますから」


「そうでありますか。お気遣いありがとうございます。」


「北根島にいると不思議ですね。噂には聞いておりましたが、昔の世界に戻った見たいです。元茎島にはない。不思議な人の暖かみと、物を大切にする考えがあるような気がします。」


「そうですか。そんな風に言っていただけるなんて嬉しいです。一つ疑問があるのですが、そのスマホと言うのはどう言うものなのですか?」

「スマホというのは、イマルク合衆国で開発された電子機器の事であります。元茎島の人ならほぼ全員所有してると思われます。スマホを所有していると知りたいことがすぐに調べる事ができて、遠くにいる人と話ができたりして、すごく便利に生活出来ると思います。」


「へぇーそんな便利な機械を元茎島の方たちは所有しているのか。」


「そうですね。他にも自動車や電車と言われる移動に便利な乗り物や、大きな建物があったりするのでここの景色とは大きく違うのです。」


「僕も元茎島に一度行って見たいです。父の話を聞くとかつて北根島は先程聞いたように、便利な乗り物があって大きな建物があったと。今の北根島の管理者になってから変わってしまい、今のようになったと父が言っていました。」


「あなたのお父さんは何をされている方ですか?」


「それが、分からないのです。手紙を送っても返事はないので。」


「ごめんなさい。配慮の足りない質問をしてしまい。」


「いえ、大丈夫です。それよりも着きました。

こちらが、樅川陣屋です。」


「もう、ついてしまったの?お礼をしたいのですがお名前だけでもお聞きしてもよろしいですか?」


「僕は古祖 良成と申します。あなたは?」


「んー、わたくしは柊時(ひらとき)と申します。ヒラちゃんって読んでください。では、古祖さんまたどこかでお会いしましょう。」


少女は陣屋の元へ去って行った。


続く






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