第4話 光る手鏡(2)

 日の出前、鐘の音で僕は目を覚ました。起床後最初に行う事は境内の掃除だった。境内には毎日多くの檀家が訪れる。その為、毎日掃除が欠かせない。日の出とともに掃除は終わる。次に朝食の準備を行う。北根寺には多くの僧侶がいるので食事の準備も大変な作業になる。本日の朝食は大根の味噌焼きとほうれん草の付け合わせである。僕は先輩僧侶達に教えてもらいながら、料理を作る今まではお母さんや妹の来津枝が料理を行っていたので、ほとんど料理をした事がない。その為、先輩達から「古祖お前トロいぞ!もっとテキパキと」と言われてしまった。これから毎日料理を行う事になるので日々勉強していこうと思う。

 朝食支度が終わり、朝食を済ませると前北根登山を行う。前北根登山は出家して10年未満の若手の僧侶で行われる修行である。前北根登山はどんな天候の日でも行い、中には吹雪の中で登山を行い滑落で死者も出ている恐ろしい修行である。前北根山は往復2時間程度で登れる山だが、途中に急傾斜地がある。僕は登山の経験があまり無いため、あまり早く登れずに置いて行かれた。先輩達は心配して「古祖大丈夫か?」と心配されたが僕は「大丈夫です。」と返事してつらい登山(修行)を乗り越えた。山頂には10時「頃についた。山頂は開けており晴れの日なら麓の町が1日平和に暮らせるように願い、雨の日なら山頂付近にある祠に祈りを捧げる。私が初めて登った日はあいにくの雨だったので、祠に祈りを捧げた。

 前北根登山を終えると先輩僧侶達が作った昼食を食べる。北根寺初めての昼食はジャガイモの味噌汁と五穀米であった。昼食は上手な先輩達が調理をするためとても美味しく感じた。昼食を終えると1時間程度休憩に入る。午前中の疲れをここで取る。

 午後になると農作業を行う。北根寺には広大な山林と農地があり僧侶達の食料は全て北根寺の畑で賄っている。余った野菜は訪れた檀家や住民にも配っており北根寺は多くの人たちに慕われている。

 僕が行った作業は収穫作業であった。今年は天候不順なこともあり小さめなものが多いこれから来る冬までに食料を備蓄出来るか不安である。

 農作業を終えると風呂の準備を行う。薪を割って風呂を沸かし僧侶皆で風呂に入る。登山の疲れ、農作業の疲れを風呂で癒す時間は約30分である。

 風呂を終えると夕食の時間となる。夕食は檀家から寄付された食材を利用する夕食は豪華で普段は檀家から寄付されたものであれば禁止されている肉や魚を口にしても良いのだ。北根寺での初めての食事はハンバーグであった。ハンバーグは食べたことがなく僕は夕食づくりに手間取った。先輩の指導で何とか完成したがただの肉の塊に見えて正直まずそうである。しかし、初めてハンバーグを食べたのだが、ご飯と合っていておいしかった。夕食を済ませると、歯を磨き2時間程の自由時間となる。僕は先輩と将棋をおこなっていた。自由時間が終わるとロウソクの火が消えて皆眠りにつく。これが北根寺修行僧の1日である。私は正直毎日続けられるか不安であったが、1日1日を我慢して修行していた。

 北根寺に入門して32日過ぎた9月23日。例年になく早い初雪が降った。しかもその初雪は大雪となり20cm程積もっていた。朝、玄関雪かきを行うために外を出ると1人の私と同じくらいの年齢の女性が僕を訪ねてきた。

続く

 

 

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