魔力量

 休憩していると外が騒がしくなる

 チラッと窓から外を見ると5人の勇者と大量の兵士が城門に集まっていた

 ザワついている

 勇者達を野次馬が見に来ているようだ

 兵士達が避難するように促すが一部の人々は聞く耳を持たない


 ……避難するように言っても聞かないの多いよねぇ


「勇者だ」

「防衛の為に招集したのだと思います」

「万全だねぇ」


 勇者5人、後方支援の固有能力持ちの勇者はこの場には居ないようだ

 強力な固有能力を持つ5人をちゃんと集めてる事から本気だと理解出来る


「一番厄介なドラゴンゾンビは撤退しましたが山の魔物自体強いですから油断は出来ません」

「なるほどねぇ、勇者に大量の兵士が居れば大丈夫そうだねぇ」

「数体であればどうにかなると思いますが大群が来た場合は……」

「クレマは戦える?」


 クレマに聞く、クレマが戦えれば私が居なくても大群相手でもだいぶ余裕が出来る

 一撃で倒せる程の魔力弾を放てる


「私はもう暫くは戦えません、既に魔力が底を尽き掛けています。撃つ度に調整はしましたが1発1発に魔力をだいぶ使用してしまったので」


 魔力弾は魔力を消費する

 込める魔力量が多ければ多いほど消費も大きくなる


「なるほど、なら休んだ方がいいね。まだ来るとも限らないしね」

「ユメ様はまだ戦えますか?」

「うん、まだ余裕あるよ」

「大群とドラゴンゾンビと戦ってですか」


 クレマは驚いている

 戦闘は常に高い集中力を使い体を動かす事で体力を使い戦いを行う

 今回は連戦、連戦は特に体力を消耗し易い、最初は終わりが見えなかった事もあり精神的な負荷も少なからずあった

 連戦で強い魔物とも戦っているのだからかなり体力を消耗しているはず

 それなのに私は余裕があると言う

 私は強がっている訳ではなく本当にまだ動ける


「体力は1番自信があってね〜」

「そうなんですね」

「戦闘は体力が重要だからねぇ。体力無ければどれだけ強くても数の前には為す術が無い」


 一撃必殺と呼べる攻撃手段を持っていてもそれを何回使えるかで決まる

 強い魔物一体なら良いが程々の敵が十数体となると振るえなくなった時点で負けが濃くなる


「あっ、クレマ、射程ある攻撃って魔力銃以外に何がある?」

「射程ですか……そうなると弓と魔法ですね」

「魔法かぁ……切歌みたいな?」

「はい、固有能力程自在には使えませんが自身の持つ魔力を消費して使う事が出来ます」

「魔法って私も使える?」

「まずは正確な魔力量を測ってみないと……ちょっと待っててください」


 クレマが兵士の1人に話しかける

 暫く会話を続けたかと思うと駆け足で兵士が何処かへ消える

 それから数分後に兵士が戻ってくる

 手元に水晶ガラスが付いた四角の道具を持ってくる


「これです」

「ありがとうございます」


 兵士は頭を下げて立ち去る


「これは?」


 私が聞くとクレマが答える


「魔力測定器です。これで現在の魔力量を測れます」

「ほへぇ、便利だねぇ」


 道具を使ってクレマが魔力量を確認する


 ……魔力量はやっぱ多いと良いなぁ、最低でも兵士の平均値程度は欲しい


 魔力が少ないと使うタイミングが難しくなる

 平均値がどのくらいかは分からないがそのくらいあればある程度使い勝手が良いだろう

 測定が終わり画面を見せてくれる

 そこにはランクBと書かれている

 魔力測定器は魔力量をランクで表記する


「ランクB?」

「ランクBは一般の魔法使い……いえ、魔法師団員クラスの魔力量ですね」

「魔法使いと言うのは?」


 ……魔法を使う人達と言うのは名前から分かるけど兵士も魔法使うんだよね?


 兵士も魔法を使うとクレマが話していた


「魔法使いは魔法専門の人達の事です。魔法師団と呼ばれる兵士とは違う組織もありますし」

「魔法師団……なるほど兵士は多芸で魔法師団は魔法に特化した組織で別れてるのか〜」


 兵士とは違う、別の枠組みの組織

 魔法使いのみで構成されている


「はい、そう言う認識で大丈夫です」

「今回の防衛戦に魔法師団は?」

「数人居ますよ。魔法師団は人数が少ないので余り数は動員出来ませんが」

「人数少ないんだ」

「魔力量は個人差有りますし魔法師団クラスとなるとかなり数が減ります。その上魔力量だけでなく魔法の才能も必要とされていますから」

「選りすぐりの精鋭達って事かぁ。て事は私結構凄い?」


 道具によれば私はその精鋭達と同程度の魔力量を持つと言う


「はい、魔力量だけでの判断ですが世界で見ても上位10パーくらいには入るかと」


 ……何それラッキー


 魔力量が多いのは戦術の幅が広がるので有難い


「魔法の才能は使ってみないと分からない?」

「そうですね。魔法を使ってみないと分かりません」

「成程ぉ……魔法学ぼう。他にも魔物も調べないとなぁ」


 知識が無いが故に反応が遅れた時があった

 今回は行けたが次は行けるとは限らない


「魔法は私も少しは教えられます。魔物の情報に関しては城の書物部屋に色々な本があると思います」

「借りれる?」

「雑に扱ったり無くさなければ大丈夫だと思います」

「他人の道具は流石に気を付ける」


 魔物相手は慣れている対人とは違う

 生物の知識が無いと予想を立てる事が難しい

 戦は情報が劣ってる側が負ける


「……魔法はもし魔法が上手く使えなくても身体強化魔法や魔力の扱いが慣れれば戦闘に活かせます」

「魔力の扱い……魔物が纏ってる魔力の鎧とか?」

「それも魔力の技術の一つです」

「それは欲しい」


 魔力の鎧があれば攻撃を受けた時被害を最小限に抑え込める

 ドラゴンゾンビと戦って分かったが強い存在は平然と人が数人消し飛ぶような攻撃を放ってくる

 そう言った存在と戦い続ける事を考えれば防御手段が欲しい


「魔法でも防御魔法もありますから状況次第でどう扱うかを決めておくといいかもしれませんね」

「そうだねぇ〜」


 魔法について話をしながら休憩をする

 魔物が現れてもすぐに行動取れるように城門付近で行動する

 兵士や勇者が交代交代で警戒しているようだ

 時間が経ち夜になったが魔物は現れない


「ユメ様、お休みになった方が良いかと」

「大丈夫」


 徹夜は慣れている

 1日程度なら眠気は来ても余裕で起きていられる

 その上こっちの世界に来た後かなり寝ていた

 私は多少寝貯め出来る体質を持っている

 寧ろ仮眠を取ってる最中や後だと動きがどうしても鈍る


「警戒しているのは分かりますが仮眠を取った方が」

「……朝になったらね。夜が一番警戒すべき時間帯だから」


 闇夜に紛れた奇襲が危険

 夜は昼間に比べて視界が悪い、警戒していても接近に気付かない可能性が高い

 それに寝ずとも充分身体を休めている

 朝が来るのを待つ

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