遠出の準備

 ……どこ行こう。訓練場? 出来れば魔物辺り斬りたいけど


「訓練場に行くのですか?」

「悩み中」

「訓練場にも斬る用の案山子などはあると思います」


 兵士の訓練には対人訓練以外にも案山子や巻藁などを立てて的にする訓練もある


「せっかくの良い武器だから魔物とか狩りたい。ロアベアって近くに生息してる?」


 こちらに来て戦った中で新武器の相手として丁度良い相手で思い出したのはロアベア

 しかし、ロアベアは本来この国の近隣に生息していない魔物


「いえ、生息してません。近くに生息している魔物は大半弱い魔物ですので」

「ちぇー、折角の新武器だから良い試し斬り相手居れば良いのに」

「弱い魔物ではダメなのですか? あくまで試し斬りですし充分だと思いますが」

「ロアベアより全然弱いんでしょ?」

「そうですね。ロアベアに比べるとかなり弱いです」

「弱い魔物は手応えが無さそう」


 悩む私の隣でクレマが少し考え事をしている

何か思いついたようでこっちを見る


「でしたら明日、少し遠出しますか?」

「遠出はありだなぁ〜、移動手段は?」


 近くに丁度良い魔物が居ないのなら魔物の居る場所に向かえばいい

 日帰りではそこまで遠くには行けないと思うが道中で試し斬りに丁度良い魔物が見つかるかもしれない


「こちらで用意します」

「それじゃ明日を楽しみに待つかなぁ」

「日帰りでもかなりの距離を移動出来ると思いますので」

「移動手段ってこの国に来た時のやつ?」


 勇者はその乗り物に乗ってこの国に来た

 速度が速く移動が楽、全速力なら並の魔物であれば振り切れる程の速度を持つ


「はい、そうです。勇者様方が乗った物は最新技術で生み出された物です」

「あれ確かに速かったからねぇ〜。操作は?」

「私が出来ます」

「凄っ、それってメイドの仕事?」

「いえ、メイドの仕事ではありませんが私は一通り出来るように教わっています」

「優秀だねぇー」


 感心する

 本職に必要のない技術まで習得しているのは環境次第では珍しくは無いだろうが一通り出来ると言うのは強みになる


「お褒めに預かり光栄です」


 今日は部屋に戻り食事を取り明日の準備を始める


「必要な物があればすぐに用意致します」

「それなら日帰りだけど一応キャンプ道具と緊急時用の水、食料、後はタオルとか遭難時に使える道具一式」


 緊急時用の道具を言う

 日帰りとは言え何があるか分からない以上緊急時に使える道具やその準備は必須となる

 特にこの世界に私は詳しくない、だからこそ余分にも思える程の準備が必要となる


 ……でも多すぎても持ち運びが厳しいからなぁ。バック複数持って一部携帯用に分けるかな


「戦闘に使う道具などは用意しなくて良いのですか?」

「うーん、武器は大剣で良いし魔力銃は有っても使えないからなぁ。他だとあっ、短剣と投げナイフ数本用意して欲しい。あと煙玉と小型の爆弾」

「防具は使わないのですか?」

「防具? あぁ、普通に忘れてた。確かに戦うなら欲しいか」


 私の今使っている服は動きやすい普段着

 他の勇者のように戦闘用の服を着ていない

 服の上に防具を付けている訳でも無い

 普段から防具を使為、防具の存在を忘れていた


 ……魔力銃や魔法なんてある世界だから防具は確かに欲しいかなぁ。動きづらくなるなら要らないけど


「なんか動きやすい、動きを邪魔しない防具ってある?」

「防具であれば幾つか用意されています。望みの物があるか分かりませんが」


 勇者の身体のサイズにあった防具は予め用意されているようだ

 私は不参加を表明したので防具を選ぶ事をしていないが他の勇者達は防具を付けている

 剛貴、切歌の2人は軽装と呼ばれる種類の防具を付けていた


「用意がいいねぇ」

「すぐに訓練や魔物討伐が開始出来るように準備されていました」

「なるほどねぇ〜確かに準備されていれば直ぐに動ける。頭良いねぇ〜」

「持ってきますので少々お待ちを」


 クレマは部屋を出て防具を取りに行く

 待っている間は軽い運動をして身体をほぐす

 今までは大半寝転がっていたり訓練に参加するまでは運動も散歩くらいだった


「動きが微妙、この世界に早く慣れないとなぁ」


 クレマが防具を持って戻ってくる

 ガチャガチャと音を立てながら台車で運んでいる


「これで全てです」

「6着、思ったより用意してるね」

「軽装、重装備、魔法衣装をそれぞれ2着です」

「魔法衣装って?」

「魔法使いが使う魔法補助機能を持つ服です。他2つよりは耐久性能は低いです」

「なるほど……魔法補助かぁ。ただ私は魔法主体じゃないから軽装かな」


 重装備は重い、重ければその分動きが遅くなる

 そしてその重さと防御力を保つ為に使われる鋼鉄などの材料で作られた部位が動きを制限する

 代わりに防御性能はこの中でずば抜けている


「となるとこの2着ですね」


 軽装の2つ以外を退かす

 1つは肘、膝、手の甲、胸元などに鉄製の素材が使われている

 重要部位を覆うだけで他の部位の装甲を削る事で重さを軽減しているのだと分かる


 ……こっちも悪くない


 もう1つの長袖長ズボンの上下別れた服は鉄製の素材は一切使われてない

 服に触れて確認する


 ……これは線維? 生物製?


 触れて頑丈な繊維で作られた服だと分かる


「勇者様達の世界では頑丈な繊維で作られた防具があると聞きました」

「繊維……あぁあるね」

「その繊維は魔物から入手した素材で作られています」

「魔物って消滅しないっけ?」


 ロアベアは倒した後消滅した

 跡形もなく消えた


 ……素材?


「稀に消滅しない魔物が居ます。その魔物を利用しています」

「なるほどぉ」

「服自体は頑丈ですが衝撃は通します。この防具で攻撃を受けるのはオススメしません」

「……悪くないな」

「それとも明日行く前に防具屋行きますか?」

「そんなのあるんだ」

「はい、兵士以外にも魔物との戦闘を行う方が居ますので」

「……選択肢は多い方がいいしそうしよう! 一先ずこれ着て良さそうなのあれば変えようかな」

「分かりました。他の防具は回収します」


 選んだ1着を残して残りを回収して部屋を出て戻しに行く


「この服、前使ってたのに似てる」


 クレマが小さなバックを持って戻ってくる


「何それ?」

「これに道具を入れます」

「小さいけど……あっ魔導具って奴?」

「はい、そうです。見た目以上に物を入れられる魔導具で勇者様方用に準備された物です」

「そんな物が……これなら大荷物でも問題無く運べる」

「魔王討伐には長期遠征も有り得るので王様が作らせたそうです」

「用意周到だねぇ〜」

「武器も用意はされていましたし色々と準備を進めていたそうです」

「なるほどねぇ」


 バックの中身を確認して準備を進めて夜中になったのを確認して寝る前の支度を整えて早めに眠りにつく

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