注文していた武器

 その日から訓練場に立ち寄る時は兵士と手合わせをするようになった

 木刀で薙ぎ払っていく


「複数人でかかってきていいよ〜」

「よっしゃ行くぞ!」

「連携忘れんなよ!」

「ぶっ倒ーす!」

「俺も参加する」

「やれやれー」


 4人の兵士達が木刀を構えて私に攻撃を仕掛けてくる

 先に1人が切りかかる

 攻撃を避けて攻撃を仕掛けるが横から突きが飛んでくる

 攻撃を辞めて身体を逸らして回避後、一旦距離を取る

 左右から飛び出した2人が同時に木刀を振るう

 ほぼ同時

 力を込めて先に左側の攻撃を弾いてすぐに持ち方を変えて受け流す

 体勢を崩した兵士をスルーして前に居る2人の兵士を確認する

 突きを繰り出している

 木刀で突き出された木刀の横を軽く当ててズラす


 もう後ろの2人は体勢を立て直している

 呼吸を整えて低姿勢で突っ込む

 そして真正面に居る胴体を叩く


「1人」


 倒した兵士の背後に回って鋭く突きを繰り出して突きを得意とする兵士を倒す

 後2人、連携して攻撃を仕掛けてくる

 片方は避けてもう片方を受けて弾く

 そして胴体を切り最後の1人は再度攻撃を仕掛けてくる前に打つ


「はい、終了」

「まじかぁ」

「くっそー全く通じねぇ」

「4人で無理か……」

「みんな上達してるよー、特にそこの2人は連携上手いね〜」


 2人を指差す

 距離を取った時同時に追撃してきた2人だ


「有難う御座います」

「俺達兄弟なんで連携は得意っす」

「成程、兄弟ならではの連携か。良いねぇ〜」

「次手合わせお願いします!」

「いいよ〜」


 休憩を終えた兵士が立ち上がる

 次々と薙ぎ払っていく


「ユメ様」

「うん?」


 丁度終わった時クレマに声を掛けられる

 試合場を降りて近寄る


「王様が呼んでいます」

「王様が?」


 ……なんだろ。武器にしては早い気がする


 なんで呼ばれたか考える

 武器では無いなら何か魔王軍に動きがあった可能性はある

 今は参加してないが武器が用意されたら参加する事になっているなら問題が起きたなら呼び出されてもおかしくは無い


 ……何かあったと考えるべきかな〜


「はい」

「丁度良いし終わりにするかなぁ〜」


「ありがとうございました!」

「くそーまたやりたかったのに」

「次やる時までにもっと強くなる」

「おー、鍛えるぞ」


 クレマと一緒に王の待つ部屋に向かう


「それで何処?」


 クレマに行き先を聞く

 まだ聞いていないから知らない


「王の部屋です」

「最初に会った場所?」


 王の部屋と言われ思いついたのは勇者が集まったあの部屋


「いえ、その場所ではなく王様が住んでいる部屋です」

「へぇ、あそこじゃないんだ」

「あそこは権力を示す公的な場です」

「成程大事だよねぇ〜そういうの」

「ただ勇者様方と話すならあの場でだと思いますので個人的な呼び出しだと思います」

「あぁなるほどねぇ〜」


 ……個人的なら尚更分からない


 王の待つ部屋に着く

 クレマが扉をノックする


「入れ」


 中から声がしてクレマが扉を開き先に中に入る

 その後に私が中に入る

 部屋の中は物一つ一つは高そうな物だが通路などにある他人に見せびらかすような派手な装飾は付いていない

 王様以外には誰も居ない

 大きな机に大量の紙が束になって置かれている

 その紙束を横にズラして王様は私達を見る


「メイドよあれを持ってきてくれ」

「わかりました」


 クレマは一礼して部屋を出て扉を閉める


「何用かなぁ〜?」

「君の望みの武器の件だ」


 王様は真剣な面持ちで話す


「……早くない?」

「急いで作って貰った。急ぎこそしたが質は保証する」

「成程」


 魔王討伐に時間がかかる事は簡単に予想がつく

 それなら王様側からしたら早めに動いて貰う方が都合が良いのだろう


「各国に協力をして貰い最高の素材を集め歴代最高の鍛冶師、賢者と呼ばれる魔法使い、ある魔導具製作者の協力を得て完成した」


 ……凄い人達なのかな?


 相当無茶な望みだった筈、本当に望み通りの物を作ったならその分は働かないと不味い

 まだ武器を見せて貰っていないから確定では無いが


「凄そうな肩書きだねぇー」

「無論、しっかりと実績がある者達だ」

「それでその武器は? 見当たらないけど」


 周りを見るがそれっぽい物は見つからない


「今持ってこさせている」

「持ってこさせて……あぁ、クレマに持ってくるように言ったのが大剣かぁ」

「そうだ」


 クレマが持ってくるのを待つ

 その間話す事は無いので静寂に包まれる

 王様も特に何も話さない


 ……眠い


 欠伸をする

 それから数分後にクレマが扉を開けて中に入ってくる

 大きな箱を持ってきていた


「大きいなぁ」

「床に置いてくれ」

「はい」


 指示通りにクレマは箱を床に置く

 鉄箱のように見える箱で見た目から硬そうな印象を受ける

 箱には何か模様が描かれた札が1枚貼られている


「この札は?」

「箱を開けられないように魔法が施されています」

「開けられないように?」

「君以外が開けられないようにしてあると言う事だ。盗まれる訳には行かないからな」


 王様がクレマの説明に補足する


「あぁ、成程ねぇ〜」

「開けて良いぞ」

「それじゃ……」


 私はワクワクしながら札を剥がして箱を開ける

 箱の中には大剣が入っていた

 独特な形状の大剣で片刃で長い

 太くはなく基本的な大剣よりは長剣に近い形をしている

 想像していた見た目とは違うがそれは特に気にしない

 柄を握り持つ

 ずっしりとした重さを感じる

 この大剣は相当重い


「クレマこれどうやって持ってきたの?」


 こんな重さの物が入ってる箱、それも見た目からして箱自体も中々重いと思われる

 普通なら1人では持って来れないと思ってしまう


「箱に軽量化の魔法が掛けられていたので私でも持ち運べました」

「成程、魔法って便利なんだねぇ〜」

「はい、一言で魔法と言っても様々な魔法がありますから、ユメ様も特訓すれば使えるようになると思います」

「それは良いなぁ。よっと」


 大剣を持ち上げる

 両手でしっかり握る

 持ち手はしっかりと私のサイズに合っている

 大剣の見た目も悪くない、大剣らしい重さもあり今のところは高評価

 だが1つ問題点がある


「これ持ち運びがきつい」


 私の身長からするとこの大剣は身丈以上の長さを持つ

 それはつまり普段の持ち運びが厳しいという事

 その為、私はちゃんと条件に折り畳めたりする物と言っていた


「心の中で解除と念じるんだ」

「心の中で?」


 取り敢えず言われた通りにする


 ……解除


 すると大剣が形を変えて腕輪に変わる


 ……何これ凄っ!?


 私は驚く、こんな技術は前の世界には無かった

 これなら持ち運びが楽になる

 腕輪の形態だと大剣の重さも感じない


「凄っ」

「これは魔導具の技術ですね」

「あぁ、魔導具製作者の強力で魔導具化させてある。その上砕けないという注文に対しては自己再生の魔法式を埋め込んである」

「魔剣ですか」

「魔剣?」

「魔法を宿した武器の事を指します。魔剣を作れる鍛冶師は数が少ないんですよ」

「うへぇ、凄いなぁ」

「はい、これは本当に凄い武器です」

「これで魔王討伐に参加してくれるという事で良いのだな?」

「ここまでされたらやるよ。あぁそれと魔王に関する情報は全て即提供を」

「元よりそのつもりだ」

「そんじゃ試し斬りしてくるー」


 私は部屋を出る

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