本気の勝負1

 勇者ランキング第2位 今井いまい 剛貴ごうき

 固有能力は肉体依存の高倍率の身体強化

 シンプルで強い力、その持ち主も元々身体能力が高く戦闘センスもあると言う


「固有能力ありでなんて無茶だ!」

「本人がやる気なら止めなくていい。彼女は固有能力の本当の恐ろしさを知らない」

「念の為に回復薬用意しておきます。何かあったら困りますから」

「蘇生薬は?」

「ありませんし縁起でもない事を言わないでくださいぃ」

「面白そうですわ」


 勇者達はそれぞれの反応をする


 試合開始と同時に剛貴は固有能力を使う

 固有能力の発動を待つ


 ……確か身体強化だったっけ。シンプルでいいねぇ


「発動は終わった?」

「待ってたってか?」

「そりゃ使う前に倒して卑怯だとか言われたくないし、先手どうぞー」

「舐めやがって!」


 怒りを露わにする

 地を蹴り突っ込んでくる

 固有能力による身体強化がされているだけあって早い

 剣による攻撃を軽々と躱す


「力任せで大振り」


 力任せな大振り、技術なんて無いただの暴力

 躱して素早く突きを繰り出して剣を持つ腕を軽く刺す

 深く刺さる前に止めて引き抜く

 剛貴の腕から血が垂れる


「どうした? この程度か?」

「調子に乗るな!」


 剛貴は叫び素早く連続で剣を振るう

 その全てを躱す、身体能力に依存した速度が早いだけ

 取るに足らない

 横薙ぎは後ろに下がり回避する

 すると剛貴は踏み込んで突きを繰り出してくる


「阿呆か」


 ため息をつく

 容易く避けて再び腕を軽く刺す

 引き抜いて横に飛んで距離を取る

 攻撃は全て避けて軽く攻撃を入れていく


「弱いなぁ、この程度で調子に乗るな」

「あ!?」


 時々煽りを入れて挑発する

 剛貴は反応して怒り狂う


「クソが! ちょこまかと逃げてんじゃねぇ!」

「そうか」


 剣による攻撃を片手で持った剣で真正面から受ける

 傍から見れば無謀な手、身体強化で底上げされた力で押し込んでくる

 押し合う、このままでは押し切られた方が負ける


「このまま押し潰してやるよ」

「わー押されるー」


 どんどんと押されていく

 勝てると確信して剛貴は力を更に込め体重も掛ける


 ……油断大敵


 思い通り過ぎて呆れてくる


「良い力だが使い方がなってないな!」


 私は力を込める

 そしてジリジリと押し返していく

 押し返される事を想定していなかった剛貴は体勢を崩し膝をつく

 形勢は逆転した


「身体強化してる剛貴を押し返した!? あれ魔法も使ってないのに……有り得るのか」

「高倍率の身体強化をしている相手を……どうなっている」

「凄ーい」

「凄いどころの話じゃないですよ!? もしかして手を貸してます?」

「いや? そんな事してないよ。本当に」

「どういう事? なんで彼が押されて」


 勇者達は驚きながらそれぞれの反応をする

 彼らは共に訓練をしている剛貴の力をよく知っている

 固有能力無しで押し返した事は異常


「押されてるだと……ふざけるな」

「はい、終了」


 押し合いを辞めて後ろに飛ぶ

 押し切れたが押し切るのは目的じゃない

 普通に勝つのは目的じゃない


「なっ! どういうつもりだぁ!」


 ……力は強いがこの程度、話にならない


「早く立て」


 剛貴が立ち上がるまで待つ

 徹底的にプライドを壊す

 立ち上がった剛貴は剣を振るう

 避けて腕を軽く斬る

 斬る度に血が飛び散る

 攻撃を躱して軽く反撃を繰り返す


 ……攻めるかな


 息を切らしている剛貴を見て攻めを考える

 呼吸を整えて連続で素早く剣を振るう

 剛貴は急いで身体の前で剣を斜めに向けて胴体を守るようにするが剣身を斜めにして前に出すだけでは防御出来る範囲は狭い

 鋭く突きを繰り出して胴体を軽く刺す

 深くは刺さない、浅く軽く刺す

 剣を動かして防ごうとしているが動くよりも胴体に剣先を突き刺す


「遅い」


 剛貴は防御を辞めて剣を振るう

 これでは防げないと判断したのだろう

 受けて剣を逸らして剣を滑らせる

 体勢を崩した剛貴の顔面に蹴りを叩き込む


 ……肉体強度は上がってないな。魔法も魔力の防御も習得してないか


 蹴りを叩き込まれた剛貴は剣を落とし顔を覆う

 拳を振るい追撃する

 鳩尾に拳を叩き込んだ後、顎にアッパーを食らわせる

 脳に響いたのか一瞬意識を失ったように倒れ込みかける


 剣を仕舞って端の地面に置く

 そして拳を握る

 突っ込んで胴体に素早く一撃を叩き込む

 剛貴はよろめく


「ふ、ふざけるなぁ!!」


 大声を上げて殴りかかってくる

 拳を躱して横腹に一撃打ち込む


「どうしたどうした!」


 再び攻撃を躱して拳を叩き込んで煽る

 突っ込んできたところを足払いをして転ばせる


「降参まだ?」

「降参なんてするか」


 私は今回、こいつが降参するまで叩く

 プライドが高いからこの調子では暫くは降参をしないだろう


「やるなら早く立て」

「くっそが……」


 一度蹴りを入れて立ち上がるまで待つ

 最初は圧倒していた事に盛り上がっていた兵士達ももはや恐怖を感じて怯えている


 剛貴は立ち上がり私を睨みつけて殴り掛かる、避けて腕を殴り続けて足に蹴りを入れる

 振るわれた拳に合わせて拳をぶつける


 剛貴の拳の握り方や殴り方は本職には到底及ばない、喧嘩慣れしているのか素人よりは幾分かマシではあるがその程度


 ……この程度が強者なのか


 わざと拳に当てて殴り合う

 剛貴は息が切れ疲れで動きが鈍くなっているのが目に見えて分かる

 疲れによる判断の鈍りと痛み、複数の要因で意識が完全に足から離れた瞬間、私は足払いで転ばせる

 そして立ち上がる前に剣を回収する

 2本の剣を持つ


「二刀流は同じ長さの武器ではしないんだけど良いか」

「てめぇ、剣を返せ」

「戦いで剣を奪われて返せって馬鹿か」


 腕を軽く切ると同時に胴体に突き刺す

 胴体の方は深く刺した

 軽く刺すだけじゃ降参はしない、なら深く刺す

 剛貴は痛みで顔をしかめる


「グッ……」

「もう面倒だしそろそろ終わりにしよう」


 胴体に刺した剣を引き抜いて軽く斬る

 そして足を貫く

 高速で胴体に三度切りかかる

 傷口から血が溢れ出す


「降参しなければ死ぬぞ」


 首元に剣を置く

 軽く引けば切れる

 首元のある箇所を軽く切れば人は死ぬ


「……降参だ」


 剛貴が降参して勝負が終わる

 1本だけ剣を鞘に仕舞って地面に置く


「兵士から技を学べ、力任せで勝てる程、戦は甘くない」


「すげぇ固有能力使った相手を圧倒した」

「強い!」

「おぉ! これが勇者か」

「勇者ランキング第2位を倒した。つまり実質2位?」

「そうなるな。圧倒してたし」

「医療班急げー! 出血ヤバいぞ!」


 兵士達が盛り上がる

 恐らく訓練中も兵士を見下していた

 この反応からしてかなりストレスを抱えていたのかも知れない

 傷だらけの剛貴は医療班が運んでいく


「凄い出血だな」

「あぁ、しかし、出血は多いが殆どの傷は浅い」

「深い傷も内蔵は傷付いてない。これなら問題なく完治する」

「治癒魔法を使います」


「そんじゃ次」


 勇者の1人に剣を向ける

 馬鹿にした奴はもう1人居た

 身に付けている服を綺麗に着こなしている中性的なイケメンの勇者

 男女共に人気がありそうな見た目をしている


「私か?」


 剣を向けられた勇者は私を見て聞く


「そう」

「分かった。本気で行く。君は油断しては行けない相手だ」


 頷いた後、試合場に登る


「あれだけ見せて油断していい相手だと思う奴は居ないでしょ」

「よく煽るが計画か?」

「頭悪いから何言ってるか分からないなぁ〜」

「そうか」


 連戦で戦う

 次の相手は勇者ランキング第1位

 氷星こおりぼし切歌きりか 身体能力も高く固有能力も戦闘向き

 ランキングだけで言えば第2位の剛貴より強い

 普通に考えれば連戦で戦う相手では無い


「準備は?」

「万端」


 切歌と対峙する

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