049 ~レンガ職人~

生徒さんが、道徳の話をしたいと言ってきた。

藪から棒だけれど、嫌いではないからと色々と話をしたわけだが、


途中から少し話が逸れ、働く意義などに話題は移行した。


私がその時伝えたのが「3人のレンガ職人」だ。

イソップ寓話であるということ、また自己啓発の分野でよく語られることが多いから、一般的に知られた話ではあると思う。


でもその捉え方が違うから、話すことをやめられない。


その生徒さんに一通り説明すると、その生徒さんは2人目がいいと答えた。


「大聖堂を作るのもいいけど、その人が思う幸せがあればいいんじゃないの?」


確かに、レンガ職人の話は3人目の考え方が尊ばれる。

大きなことを成し遂げる強い心・気持ちを持っていることを、仕事でも求められる。


しかしその生徒さんには一方で、

それを押し付けられているように感じられたのかもしれない。


「その人が思う幸せ」


確かに、確かにその通りだ。

ニュースでも、出世に興味がない人が増えていると聞いている。


人生の約三分の一を占める仕事は、今となっては生活のための仕事になってきている。たぶんこれが目指してきた世の姿……、


と言っていいのだろうか。


仕事に専念してきたからこれまでの成長があるのではなかろうか。

仕事を制限するようになっては、この複雑化した社会を操縦し続けられるのか。


そして少子化でもある。


この先の日本が目指している姿は本当に2番目の職人でいいのだろうか。


本音と建前、そして事実と理想を考えなくてはいけないのでは、と思う。

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