048 ~お門違いと言ってはいけない~

インフルエンサーという言葉がいつからか使われるようになった。


様々な分野において最前線で活躍する人々がそのように呼ばれていて、

興味を持った人はその人から専門知識を学んでいる。


そこまではいいのであるが、面白いことに、

しかしどういうわけか、

その分野に関係のないことまでアドバイスを求められることがあるらしい。


本来の目的を忘れてしまったのか。

いやそんなことはない。


インフルエンサーはいわゆるファンにとっては推しであり、

推しということはもはやその人の規範だ。

その人が言うことであればすべて正しいということになる。


だから自分が普段気にしていることを質問し、

推しから回答が得られれば、あたかも推しが自分の一部になった感覚、

あるいは近づけたような感覚になるのではないだろうか。


悩みを打ち明ける前から答えは出ているとよく言われているが、それと似ている。


アドバイスの内容など最初からあまり期待してはおらず、

それよりも、自分の推しは間違ったことを言わないだろうという期待、

そして上記の通りの同化のために言葉を欲しているように思える。


ソースはある。妻だ。


とあるインフルエンサーが使用しているものとまったく同じものが、

いつの間にか家にある。


思わず算盤を弾くそぶりをしてこれを冗談的な嫌味としている。


「〇〇さんが良いって言ってたから。」


よく見れば、そのインフルエンサーと関係がないものが多い。


しかし、お門違いとは言ってはいけない。

そしてまた、自宅に新しいものが届く。


次は食器洗浄機……。


家計が心配だ。

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