039 ~大人はいつの間にか~

寝室の窓から何気なく庭を見ると、

その脇にある駐輪場の土間にカナヘビがいるのが見えた。


持ち前のすばしっこさはなく、

周りに天敵がいないからなのか、

一歩一歩、どすどすと足を下ろしているように見える。


吹く風や陽射しを感じているような、優雅な様子。


「久しぶりにみたなぁ。」


思わず出た。

確かにね、と自分で自分に答え、そしてまた思う。


「最近見なくなったなぁ。数が減っ……。あっ。」


よく声に出すと、途端に理解できる時がある。

まさにそれだ。


トカゲが減ったのではない。

僕が自然に出なくなっただけだ。


子どもの頃は友だちと近所の藪や森の中に入って、

様々なものを見て触った。


だからたくさんいるように見えていた。


だから今でも、その数は変わってはいない。


大人になった僕が、

自然に出なくなっただけだ。



そうと気が付いて、僕は庭にでた。

芝生に水をまきつつ、あのニホンカナヘビの行方を探した。

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