017 ~弘法も筆を選ぶ~

妻は、ボールペンを探している。


仕事柄日々記録を書くので、

そして妻もその道のプロなので、

そこらへんにある「まとめていくら」のボールペンでは書けないらしい。


書けないというのはもちろん、書くことができないという意味ではない。

書きやすさの意味だ。

そして書く動機付けという意味もある。


妻が自分に合うものを探して、僕の体感ではもう2年が経つ。

そして合計ニ十本ぐらいは買い替えているんじゃないかと思う。


でもこれは愚痴でもなんでもない。

プロとして生きる妻のこだわりはよくわかる。


弘法も筆を選ぶのだ。


本日もまた、新しい一本が自宅に届いた。


これを気に入るといい。



ところで、塾で働いていると、

最近の子は――と言ってしまうことが最近増えた――、

やけに高価な文房具を所有していることが多い。


筆箱と中に納められているシャーペンやボールペンなどを合わせると、

平気で一万円を超える値段になっていることもざらだ。


しかも、

まだまだ勉強の余地がある生徒さんに限って、いい文房具を持っている。


実は我が家でも長男に同様のことをしたことがある。

シャーペン一本で六千円……。


それで勉強のやる気が上がるなら安いもんだ、とは妻。


そこで思う。

やはり大人は子どもに勉強してほしいと思っている。

その助けになるのであれば、なんだってする。


高い文房具は親の想いと符号している。


そんなことを考えると、

その生徒さんを我が子のように思って愛おしくなることもある。

(もちろん生徒さんごとに好き嫌いがあるわけではない)


親の想いは美しいと思うからだ。


僕もそこから、親としての姿勢を学ばせていただいている。


子どもが欲しいと言ったら、ぜひ買ってあげようと思う。


もちろん、値札は見せてほしいけれど(笑

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