第16話 冒険者とお話しよう《冒険者コミュ》
「平らに平らにご容赦をお願いしたいところだねええええええ。いや、お願いいたしますうううううううう! こちらの知識、及び知能、その他もろもろの欠如により、皆様に手を上げようとした事をどうかあああああああああ!!」
「「「「「「キュイ?」」」」」
半泣きで土下座する眼鏡の美人と首を傾げるイルカ、どういう状況?
「こちらとしてはねええ、御身達に危害を加える気は一切なく! どうかどうか仲良くしたく存じます!! ン~! モォセクゥン? なあ~にぼんやり立ち尽くしてんだい!? この船最強の武力たるキミがそのまま立っているとイルカさん達と竜殿が警戒しちゃうだろおおおおお? ほおら、一緒に、ひざをついてえええええ!」
「あ、はい、学士殿……えっと、誠に、申し訳なく……」
「キュイ?」
土下座が2人に増えた。
イルカ達がさらに首を傾げだす。
「あああああああ!? まだ、許してもらえていなさそうだねえ! 格なるうえは、このルート・ヴァン・アステラ!! 帝国宮廷魔術師”禁書庫”の長としてえええええ、え脱ぎまあああす!! そのまま海に飛び込んで、この命を以てええええ、はあ、はあ……海の賢者と、最期にこんな距離で会えるなんて、それに、竜の学院のどこの資料でも見た事のない海棲種! 未知との遭遇と共に散る! このワタシの最期がここだとは! モォセクゥン!? 国と家にはこう伝えたまえ! ルートは”知識の根”は最後まで探究者であった、と!!」
「あああああ。学士殿生き急がないでっ! イルカは人を食べません! 服脱がんといて!」
意外と着やせするらしい眼鏡の彼女が半裸になりつつ、取り押さえられる。
「きゅ、キュイ?」
「きゅいきゅい?」
「きゅい……?」
いかん、イルカ達も困惑している。
彼らに変人を相手にするほどの世俗感はない。
かくなるうえは……
どぼん!
「あ、竜が潜ったぞ!?」
「ひ、ひい、何をするつもりだ!?」
「ああ、竜殿、行かないでおくれ……! キミの鱗の数をまだ途中までしか数えれていない!」
「学士殿!? アンタさてはシュミで動いてるな!」
人間達の声を置き去り、海中の世界へ。
このままでは埒が明かない。
見たところ完全な悪人でもなさそうだ、話程度は聞いてもいいだろう。
さあ、その為に話を聞ける姿にならなければな。
「GRRRRRRRRRRRR」
身体が変化する、心地いい感触と共に、巨大な体が縮み、蠢き、人の姿へ。
よし、海パンも履いているな。
こぽぽぽぽ……あ、しまった! 海の中で変身したのははじめてだ!
息が出来ない!! これはまずい! ウンディーネ――
「キュイ!」
おお、ピンクイルカが迎えに来てくれたぞ! なんていい奴!
すまない、背びれを掴ませてくれ!
「キュイ! キュイ!」
ピンクイルカが私の意図を理解して一気に急上昇!
こぽぽぽぽ! 光の差す海面へ一直線!
誰かの力を借りて泳ぐというのも、良いな……。
ばっしゃあああああん!
一気に海面へ踊り出す。
今だ、ウンディーネちゃん!
「ちゅぷ」
海面を身体にした使い魔が、手のひらの形に。
「「「「「「「「え?」」」」」」」」
驚愕の声を上げる、船員達と同じ目線までウンディーネちゃんの手で持ち上げてもらう。
そのまま、私は船の甲板へ。
うむ、良い船じゃないか。
さて、と。
「……へ?」
「う、海から、現れた?」
「りゅ、竜はどこに行った? 消えたぞ!」
「今の、海が手のひらの形に!?」
「イルカと一緒に跳び出てきた、なんだ、いったい……」
「……美しい」
驚愕する船員達、そして。
「う、そ……」
「……すごい」
学士と冒険者と呼ばれていた彼らの元へ歩み寄る。
船員達は後ずさりながら道を譲ってくれた。
さて、彼らの目には私が何に移っているのだろうか。
化け物か、人間か、あるいは――。
「あなたは、いったい……」
学士と呼ばれた彼女が問う。
さて、なんと答えるべきか。よし、決めたぞ。
「――初めまして、旅人達よ。歓迎しよう、海の世界へ。我が主、水竜の使いとして」
「すい……」
「りゅう……?」
さて、話し合いの時間だ。
―――――――――――――――
あとがき
読んで頂きありがとうございます。
夏の間は毎日更新目指します。
現在カドカワBOOKSコンテストの読者選考中です、よければフォローして下の☆評価入れて頂けると非常に助かります。ありがとうございます。
引き続き南の海でのんびりリゾートスローライフをお楽しみください。
また、スローライフもの書くの初めてなので、コメントでこんなスローライフな展開が見たいとか、こんなのは見たくないなどのご意見ご感想もお待ちしております。
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