第15話 冒険者を助けよう《コミュ・冒険者達》

「お、おい……、やっぱりあの竜、魔術を使っているような……」

「いや、いやいやいや、魔術を使う竜ってお前、神話に出てくる古竜じゃないんだから……学士殿はどこだ!?」



 ふむ……、今の所、即攻撃してくるという雰囲気ではないな。

 イルカ達の様子は……。



「キュイキュイ」

「きゅいっ」

「キュイ!」


 イルカ同士で話し合っている?

 彼らは基本的には海で困っている者がいれば助けようとする性質を持っていそうだが今回はどうするのだろうか。


 ふむ……船を見た感じ、技術レベルは私の元いた世界でいう16世紀~辺りの大航海時代中期~と言った所か?

 唯一の趣味である海関連書籍を読み漁っていて正解だったな。

 フランシスドレークのゴールデンハインド号を思わせる……。


 そして、この船、どうやら漂流してそうだ。

 帆が燃え崩れている為、風を受ける事も流す事もできていない。

 海流のされるがまま、といった所か。


 この船の存在から考察出来る事は3つ。

 1つ、この世界にはこの船を造り、航海を可能とする技術がある。

 2つ、この船を航海に出させた母体、組織か、国か、少なくともそれだけの力を持った人類の文明があるという事だ。

 3つ、この船を襲った者が存在するという事実。


 エルフの少女の時と違い、今回の接触は、以降の私のドラゴンスローライフの方向性を決めかねない。


 さて、私はどうすべきか。

 まあ、答えは決まっているがね。

 お前達次第だ。



「り、竜……ひ、ひ……いやだ、死にたくない……こんな所で死にたく……――なあああい!」

「おい!? お前何を!?」



 ひとりの船員が巨大な弩、バリスタを私に向ける。


「キュイ!?」


 イルカ達に危害が加わるのは看過出来ない、残念だ、人間よ、死ぬがいい。

 ウンディーネよ……


 私がウンディーネに船を沈めさせようとしたその時だった。


「はいはいはいはい、ストップ、ストップ~!! なあにをしてるんだい!? 信じられないよ! モーセ君! そこの物騒で下品な兵器、ぶっ壊しておくれよ~!」


「はいはい、了解です」


「へ?」


 シャキン。

 鋭い音が船上で響く、その瞬間だった。


 私に向けられたバリスタがごとん、ごとんと解体される。

 船上には、2人の人影が。


 海外の学生が卒業式の時に被る紐付き帽子に、ぶかぶかのゆったりした服に身を包んだ眼鏡の女性。


 そして、赤い……鎧か?

 中世の騎士鎧を赤い鱗や甲殻で作った、そんな奇妙な鎧に身を包んだ男性。

 二振りの騎士剣で、バリスタを切り裂いた?



「ナ~イス! モーセくん! 船員諸君! 肝っ玉の小さい子は船倉に! 文明人として恥じたまえ! 海の賢者達に弓を向けるなど! 我らが女王陛下が知ったら悲しむぞ~! 見たまえ! あの賢者達の愛くるしい瞳を!!」


「「「「「「キュイ?」」」」」


「うおっふ……可愛いんねえええええ……本土の研究室で飼いたい……いやいや、ダメダメこういうのが、帝国人の悪い所だねえ、モーセ君」


「僕の村でも海の賢者のおとぎ話は聞いた事があります。大海を旅する心優しき種族……彼らが海で困った者の前に現れる話は何度も。でもまさか、本当に会えるなんて……冒険者ハンターになって良かった。でも、まさか……」


「んふふふふ、知らなかったねえ~、まさか海の賢者が竜と共にあるなんて!! これは驚くべき事だよ! 共生関係か、それとも、ふふ、友人なのかもね~」


「あの、それで、学士殿、僕はどうしますか? 竜と海の賢者、ずっとこちらを見てるんですけど」


「んふふふ、決まってるじゃあないかい。理論的に考えてみたまえよ、モーセ君。奴隷船との戦い、ワイバーンの襲撃! 我がゴールデンアクア号は大海のただなかで航行不可能となった訳だ! その状況で、ワタシ達を助けに現れた海の賢者、その友たる謎の竜! それらに我が船は弓を向けた……! となれば、既にやる事なんて決まってるじゃあないかい!! 冒険者だろうキミも! わきまえたまえよ!!」


「え? 学士殿?」



 テンションの高い女性が、ばあああ~っと両手を振り上げる。

 ヤケになったか? あのテンション、漂流してパニックになっているのだろう。


 私はイルカ達に水鱗生成を再度施して――。



「ほんっとすみませんでしたあああああああああああああああああ!!!!! それとどうか、どうか、なにとぞお助けをををををををををををををを!!!」


「……え?」


 学士と呼ばれる女性は狂った瞳の輝きをそのままに、船のギリギリの位置に立ち、それはもう見事なアレをかました。


 土下座――。


 ええ……。


「キュイ?」


 イルカ達が不思議そうに声を上げていた。


 どうしよう、これ。



―――――――――――――――


 あとがき


 読んで頂きありがとうございます。

 夏の間は毎日更新目指します。



 現在カドカワBOOKSコンテストの読者選考中です、よければフォローして下の☆評価入れて頂けると非常に助かります。ありがとうございます。


 引き続き南の海でのんびりリゾートスローライフをお楽しみください。


 また、スローライフもの書くの初めてなので、コメントでこんなスローライフな展開が見たいとか、こんなのは見たくないなどのご意見ご感想もお待ちしております。

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