第13話 水属性魔法での寝床づくり《拠点作り》


「水鱗生成」


 水鱗生成で生まれた水は鱗に似た性質を備える。

 水でありながら撥水性を持ち、柔軟性を持つのだ。


 まずはこれを、良い感じの大きさに広げる。

 私の身長……170センチは、ないな。160~165くらいだろう。

 よし、完成。


 砂浜にそれを置く、簡易水マットの出来上がり。

 腰かけてみるとわずかに沈み込むだけ。

 ぽよん、ぽよんと弾力性を保ち続けている。


「第一関門クリア」


 ふ、私が只のスローライファ―(※スローライフを志すもの)ならこれで寝床の完成とするだろう。


 だが、甘い。

 私、竜ぞ。

 ここからさらに! 竜化チートを応用!

 身体の一部を頑張って竜体! そこから頑張って水色の鱗を引き延ばして……、描写がちょっとアレだから割愛!!


 うおおおおお!! よし、鱗のシーツ完成!


 私の鱗、これも生成のサイズを変更できるのだ!

 割とでかいウロコを生成、それを何枚も重ね合わせ、岩の上において、竜化!!

 でかい水かき付きの手で叩きつける!


 岩に亀裂が入ってきた所でやめるとあら不思議、重ね合わせた状態で力が加わった鱗はそれぞれが接着し、布のような性質を持つものに!


 このままこのシーツを、水鱗生成で完成させた水マットに被せる。

 互い撥水性を持つので鱗のシーツに水が漏れたり、形が崩れたりすることもない!!


「ベッド完成!!」


 なんという事でしょう!

 白い砂浜に、水色の水ベッドマットが!


「ふふふ、これで最低限の寝床は完成、あとは……」


 だいぶ日が落ち始めた、とは言えやはり南国、まだまだ日差しは強い。

 夏、砂浜で寝転ぶ、海――ここから導かれる答えは。



「パラソルだ」


 日差しを遮る砂浜の友人、パラソル。

 あれこそ、素材が必要な気がするが……



「問題なし」


 うおおおおおおおお!!

 再び鱗の布を作成、鱗をはやして重ね合わせて殴る殴る殴る!!


「きゅ~い」

「キュイキュイ」

「きゅい」


 イルカ達がいつのまにかこちらを見学している。

 アイツ何してんだ? さあ、知らん、みたいな顔だ。

 いつか彼らにも文明の利器のすばらしさを教えてやりたいが……。


 まあいい、今はとにかく自分の為に!

 はい! 円形の鱗布完成!


 水鱗生成で円形の水を作成!

 これに鱗布を被せる!


 円形水パラソルの完成だ!

 鱗布だけでもパラソル代わりにはなりそうだが、それには骨組みが必要になる。

 今の所は水属性魔法と竜化の力の併用で良いだろう。


 そして――意識を集中!

 水鱗生成で生み出した水の鱗は私の意志である程度浮かせたり、操作が出来る。


「浮かべ」


 すっと、私の意志に反応するように浮かぶ水パラソル。

 これを浮かばせたまま、水ベッドに寝転ぶ!


「完璧だ……!」


 鱗布ベッドに寝転がる、太陽光は鱗布パラソルで防ぐ。


 ざざーん、ざざーん、波の音、私の視界には白い砂浜、透明な海、ぷかぷか浮かぶイルカ達。

 日陰の中からリゾートなその景色をのんびり眺める。



「……良い」


 竜形態での海中世界も最高だが、人間形態でののんびりリゾートスタイルも最高だな。


 水鱗生成と竜化。

 応用すればテーブルやソファだって作れそうだ。


「……あとは、崖の上に行く方法を見つけて……材木を……揃える……、浅瀬の上に水上コテージなんかも作れそうだ。水鱗生成を応用すれば、防水コーティングだって……」


 少し、眠たい。

 否応なく重たくなっていく瞼。

 強い眠気、だが、あの労働後の気絶に近い眠りとは違う……


 いつかどこかで体験した事のある……眠気、それが何だったか思い出す前に……。

 私はその泥濘のような眠気に意識を明け渡した。


「……くー……すー、すー」


 ◇◇◇◇


 ざざーん、ざざーん。

 波の音が、ただ、心地よかった。


 私は目を開く……長い時間眠っていたのだろう。

 すっかり辺りは暗くなっている。


 イルカ達も眠っている。ぼんやり浮いているようだ。

 イルカってあんな感じで眠るのか、なんか目がぼや~っと半開きになっている。


 ふと、空を見る。

 

「……ああ、凄い」


 闇の幕を飾る、綺羅星の数々。

 赤、黄、青、こぼれんばかりに輝く星がそこにあった。

 いや、それはもう、星空というよりは……。


「……宇宙」


 また、眠気。

 私はなんどか瞼を落とし、薄目を開けたままその星空を眺める。

 夜の海、星の空……

 絶海の孤島で過ごす初めての夜に、恐怖や孤独感も、微塵もなく。


 あるのは只、ため息が出るような、美しい光景。


 私はまた、目を瞑った。



 じゃり、じゃり、じゃり。

 砂浜を踏みしめる音が、聞こえる。

 じゃり……。それは私のすぐそばで止み、もう鳴る事はなかった。



『……良……場所…………?』


 何か、声が聞こえた。

 不思議と恐怖はない、イルカ達が何も気にしていないからだろうか。


 その声に、私は寝ころんだままゆっくり頷く。


 少し、風が吹いた。

 照れ屋の女の子が小さく笑うような、風。


『良い夏休みを』


 声は、もう聞こえなかった。



 ―――――――――――――――

 あとがき


 読んで頂きありがとうございます。

 夏の間は毎日更新目指します。


 現在カドカワBOOKSコンテストの読者選考中です、よければフォローして下の☆評価入れて頂けると非常に助かります。ありがとうございます。

 引き続き南の海でののんびりリゾートスローライフをお楽しみください。

 また、スローライフもの書くの初めてなので、コメントでこんなスローライフな展開が見たいとか、こんなのは見たくないなどのご意見ご感想もお待ちしております。

 

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