第12話 水鱗生成と海水パンツ《スキル研究回》

「スキル使用、水鱗生成」


 ずっ。

 早速、私の身体に異変が起きる。


「なるほど、そういう感じか」


 スキル・水鱗生成、その効果は――


【自分のイメージで水の鱗を生成、変化、加工を可能とする】


「素晴らしい汎用性だ……!」


 方法がわかる。

 ……腕の力こぶに力を籠めるのあの感覚。

 自分の身体の延長戦上にもう1つ透明な部位があるかのような……。



 ちゅぷ……。


 空気中に水が集まって……よし。


 ぽちゃん。

 水で出来た鱗の完成だ!

 でかいな、私の顔くらいはあるぞ。


 多分これ、本来の使い方は竜形態の時に自分の本来の鱗とか甲殻に纏わせてバリアみたいに使うんだろうんな。


 だが、今はバリアよりも腰蓑だ!!

 さらにこのでかい水の鱗の形を変える。


 水の鱗に手のひらを触れてと……。

 イメージするのはバスタオルのような布。

 とりあえず最初は腰に巻けされすればいい……。


 曲がれ、曲がれ、曲がれ……

 お! すごい、水のうろこがゆっくり形を変えていっている!


 出来た!!

 なんか伸びたぞ!


 最後にこれを私の腰に巻いてだな……よいしょ。

 うわ、冷た、くないな。

 むしろ腰だけ温水に入っているように心地よい。


 ふふふ、出来たぞ!

 水竜特性、水の腰蓑……!!



「キュイ?」

「……しまった」


 イルカ達がいつのまにか私を見ている。

 ふ、ふふ、私はバカか……


 水で出来た、腰蓑……。

 透明……!!

 何も隠れていない! 

むしろ全裸より変態度が上がっている!


「どうして……」


 くっ、考えろ、崎島海人!

 なんのために20年も社畜してきたんだ!

 この程度の課題、いつもなんとかしてきて。


「キュイキュイ!」


「え?」


 ぽーんとピンクイルカが何かを私に放り投げてきたぞ。

 すごい尾びれの使い方、バレーのトスみたいだ。


 砂浜に落ちたそれは……白く輝く石?


 うお、なんかめちゃくちゃ光って……。


「……マジか」


 なんか私の水鱗の腰蓑、光って……。


「……これ、完全になんか、少しエッチなアニメとかでよくある急所を隠す謎の光では……」


「キュイ!!」


 キュイじゃないが。


 ◇◇◇◇


「うおりゃあああああああ!!」


 ぽんっ!


 シャア、出来た!!


 あれから数時間、水鱗生成スキルによる腰蓑を諦めた私はついに成功した。


 白い砂浜の上にあるのは水色の海パン!!

 原材料! 竜形態の時の鱗!!

 めちゃくちゃ頑張ってウロコを引き延ばしたりしたら出来た!!


 くっ、人間、大変だ……。


 早速履いてみる。ふ、この履き心地……! 悪くないぞ!


「ふふふ、なかなか似合うじゃないか。水色の髪に水色の海パン……水竜の鱗だ。撥水性もばっちり、お財布にも優しい!」


 海面に移る南国スタイルの自分を眺める。

 む、長い髪が邪魔だな。


「水鱗生成」


 腰蓑には全く役立たなかったこのスキルだが、髪をまとめる髪紐代わりには使える。


 小さな紐サイズまで縮めて、形を変えてこの通り。


 水の輪っかが私のさらさら水色ヘアをまとめてポニテに変えてくれる。


 ふふん、良い感じ良い感じ。


 水色ポニテの海パン美少年の完成だ。

 我ながら一部の人間の性癖に触れそうな容姿だな……。まあいいか。

 特に人間とかかわる予定は今のところないし。


 さて、そろそろ日が落ち始めてきたな。

 イルカ達は……


「きゅいきゅい」

「キュイ!」

「キュイキュイ!」


 まだ浅瀬の中でぷかぷかゴロゴロタイムか。

 ふむ……とりあえずもう少し拠点づくりを進めたいものだが……。


 寝床か……。

 葉っぱでもあれば簡易的に草でベッド作ったりもできるはずだ。

 高校のサバイバル部の合宿、無人島で一週間自給自足生活を思い出す。


 砂浜に


 む?

 崖の上……あれは、木か。


 なるほど、この入り江は砂浜の後ろを崖でくるりと囲まれている。

 あの崖さえ登れば島の中に入れるという事か。

 目算で20~30メートルくらい……高いな。

 今のところ昇る方法は思いつかない。


「寝床の材料、どうしたものか……あ、そうだ」


 そうだ、今の私にはこれまでなかった力がある。


 ふふふ、ある物でなんとかする、自分の手札を切って知恵で生活環境を整える。


「これこそスローライフの醍醐味だ」


 ものは使いよう。

 水鱗生成、腰蓑には全く役に立たなかった能力だが……これで寝床を作ってやろう。


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