第7話 遭難エルフと水属性魔法《コミュ回&魔法鍛錬》


「それでね……あのね……おねいちゃんが大きなお船に乗っていなくなっちゃったの……お父様とお母様にいくら言ってもね、おねいちゃんを探しに行っちゃダメって言われてね」


「GR」

「キュイ」


 バシャバシャばしゃ。


 大海原で今、私は妙な事をしていた。

 イルカ達と力を合わせてこの奇妙なヨットを押している。


 大海原でエルフの幼女がなぜ、ヨットで遭難しているかと言うとだ。


「でもね、カイね……おねいちゃんに会いたくて……一緒にお歌の練習、したくて、おやくそく、してたから……おねいちゃん……うわあああああああああああん」


 多分、いなくなった姉を探して海に出た……みたいな感じだろう。

 そして、海に出たは良いものの、うん、普通に遭難したのだろうな。


「キュイ!」

「キュイキュイ!」

「きゅいきゅいきゅいきゅいきゅいきゅい、ナサケハヒトノタメナラズ」

「キュイ!!」


 イルカ達は恐らく、彼女の泣き声を聴いたのだろう。


 お人好しな彼ら?は、キュイキュイ鳴きながらエルフの少女のヨットをどこかへ運び始めたのだ。


 そういえば、イルカが人を助ける話を本で読んだ事あるぞ。


 えっと、確か、1988年ジャワ半島で転覆した貨物船の乗組員を近くの島へ運んだり……あとはサメに襲われた人間をイルカの群れが守ったりか。


 私も彼らに助けられたしな。

 異世界でもイルカの性質は似ているのか?

 色はかなり個性的……ゲーミングイルカだけども。



「……イルカさん達、竜さん……カイを、助けてくれようとしてるの? ……ありがと、ありがと……ほ、んとはね、カイ、怖くて、暑くて、喉乾いて、しんじゃうかと思って……ぇ」


 む、確かに人間の身体だとこの日差しはきつそうだ。

 涙ぐむ少女、泣くと水分が失われるので止めたい所だが……。


「キュイ……キュイキュ?」」


 お前どうにか出来ない?

 そんな声を上げるイルカ達。

 どうにか出来ない? と言われてもな……。


《……あ~。おい、サキシマ、聞こえるか、ゼウスだ》


「え!? 我が神?」


《おおう、な、なんだよ、お前なんか信仰心が爆上がりしてねえか?》


 聞こえたのは神の声だ。


《まあいいや。お前、水属性魔法使えるだろ。それ、飲み水も創れるから。それだけ言っておこうと思ってな》


 飲み水の作成?

 ……それ、なろう系小説だと世界観次第では神の御業なのでは?


《けっけっけ。だからお前の水属性魔法は神話級なんだろうが。神話で語られる水で起きた出来事のだいたいがいずれお前の力になる。まあ、それだけだ》


「GRRRR!」


 いや、待ってくれ、我が神。

 ついでだ、魔法の使い方簡単でいいから教えてくれ。


《あ? あーそうか、お前んとこ、魔法も魔術もダンジョンもない現代世界か。えーっとだな。要はイメージだ。お前のそれは理論や自我によって現実を侵す魔術じゃない。自身の感覚によって新たな法を創る魔法だ。イメージしろ、水を。お前にとっての水のイメージ、ちょうどいま、でけえ水たまりに浸かってるだろ?》


「GRRR……」


 わかったような、わからないような。

 だが、イメージか。


 水、海……。

 冷たく、澄んでいて、心地よいもの。

 青。溶けそうで、どこまでも続く青。


 生命を構築する、流れ、留まらず、はぐくむもの。


 イメージ。

 出来る、そう思った。

 古より決まっている、飲み水を生み出す魔法の名前。


 それは――


「GRRRRR」


 ――クリエイト・ウォーター。


 生まれろ、水よ。


 ちゃぽん、音が響いた。




 ―――――――――――――――

 あとがき


 読んで頂きありがとうございます。

 夏の間は毎日更新目指します。

 そろそろ拠点づくり回始まります。


 現在カドカワBOOKSコンテストの読者選考中です、よければフォローして下の☆評価入れて頂けると非常に助かります。ありがとうございます。


 引き続き南の海でのんびりリゾートスローライフをお楽しみください。

 また、スローライフもの書くの初めてなので、コメントでこんなスローライフな展開が見たいとか、こんなのは見たくないなどのご意見ご感想もお待ちしております。


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