第50話 実家で挨拶④

「あなた!湊を大変な道に進ませようとしないで!」


「ん~、いや、深雪、湊は自分の意志で…」


「正直、話の半分も理解出来なかったけど、湊がこれから大変な目に遭うのは分かるわよ!なんでそんな道に息子を進ませようとするのよ!」


「まぁ、それは否定出来んなぁ」


 母さんの剣幕に父さんはバツが悪そうに頭を掻く。昔から父さんは母さんには頭が上がらないんだよな。ちなみに姉さんはと言うと


「モモちゃん、ギュ~ッ」


「キュ、キュ」


「えへへ〜可愛い〜」


 俺の従魔であるモモと戯れていた。満面の笑みである。昔から可愛い物が大好きだからな姉さんは。昔姉さんの部屋に行ったら熊や羊のぬいぐるみとか飾ってあった。多分今もあるのだろう。


「ねぇ、ねぇ、みっくん、モモちゃん凄く可愛いね〜。良いなぁ私も欲しい〜。どうやったらモモちゃんをゲット出来るの〜?」


「んー、なんというか俺の願いを叶える為に生まれたって聞いたな」


「ほぇ〜そうなんだ〜。所でみっくん聞きたい事があるんだけど」


「何、姉さん」


「みっくんってもう人間じゃないんだよね?セシリーさんの眷属?で上位悪魔アークデーモンだったっけ?魔法とか使えるの?」


「うん。水と闇の魔法が得意だよ」


「見せて見せて!」


 姉さんはキラキラと目を輝かせながら頼んできた。そう言えばファンタジー系な物語が大好きだったな。


「良いよ。『氷猫』」


 水と氷で作った子猫を姉さんの前で動かしてみる。姉さんの興奮は更に高まる。


「ひゃ〜〜!!可愛いー!!お持ち帰りー!!」


 某ひぐらしのヒロインみたいな言葉を発しつつ、氷猫を抱きしめる姉さん。もちろんモモも抱っこされている。


 ちなみに姉さんは外見だけならばクール系の美少女である。烏の濡羽色の艷やかなロングヘアに、母親譲りの青眼、白い肌に薄紅色の唇。女子としては高身長でせーちゃん程では無いが出る所は出て、引っ込む所は引っ込んでいるスタイル抜群の身体。学校では結構モテており、幼馴染であり、姉さんの彼氏でもある三上一樹ことかず兄が側にいなければ割と告白されるんだとか。とはいえ、姉さんはかず兄一筋なため、他の男子には興味が無い。昔から首ったけなのである。ちなみに『大人の階段』は既に二人で登ったとの事。姉の惚気話など弟にとっては中々キツイものがあるのだが、せーちゃんと更に仲良くなる為にちょこっと恋人について聞こうか迷っている。


「姉さんや、モモとイチャつくのは良いんだが、母さんを止めてくれないかね?」


「え〜、無理だよ〜。お母さんがあーなったら当分面倒くさいのみっくんも知ってるでしょ?」


 姉さんがチラッと母さんを見る。そして首を横に振る。姉さんの気持ちは分かる。母さんがあの状態になったら正直面倒くさい。


「はぁ…なんとか説得するしかないか…」


 気が重い。だが、やるしかないだろう。


「えっと母さん?」


「湊は少し黙ってて!」


「あ、はい」


 撃沈である。俺は当事者では無いのか?母さんを説得する方法に頭を悩ませるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る