第49話 実家で挨拶③

「俺が祓魔師に?」


「せや。湊が結婚する条件として魔人に転生するっちゅうのがあるやろ?魔人に転生するのは確か魔人に匹敵する力が必要だったやろ。実戦的にやっていくのが一番早いんちゃう?」


「それは、まぁ、そうだけど…」


 確かに魔人へと転生するのには今以上の力が必要になるそうだ。だとしたら実戦的にやるのが近道ではある。父さんの言う事にも一理ある。


「ふむ。魔界で『狩人』になってもらおうかと思っていたけど、ミナトくんはまだ学生だったね」


 ノヴァさんが頷きながら答える。


「狩人?ですか?」


「うん。意味合いとしては人間界の祓魔師と同義だよ。魔獣の討伐を主な生業としているんだ」


「へぇ~そんな職業があるんですね」


 祓魔師と狩人。どちらの世界にも危険な生物から人々を守る職業はあるようだ。


「ん〜、じゃあ湊、どっちにも入ればいいんでない?」


 父さんがゆる〜く言った事に驚く。


「え?どっちも?そんな事出来るんですか?」


「おお。確かにそれは名案ですね。とりあえず所属するだけしておくのはどうかな?祓魔師は元人間である君ならやりやすいだろうし、狩人もセシリーとアルがいるから一人ではないからね。祓魔師はどうかは分からないけど狩人はいける時だけでもいいよ」


「アルは狩人なのか?」


「魔界の狩人ギルドに一応所属している。名前は『ホムラ』だ。ミナも入るか?」


「アルが居るなら心強いな。ちなみにせーちゃんもそこに入ってるの?」


「うん。アルくんと一緒の『ホムラ』だよ。とは言っても実際は狩人としてほとんど活動してないから幽霊部員ならぬ幽霊狩人だね」


「そんなに厳しくは無いんだな。お金とか入会する際にかかりますか?」


「入会するだけならば無料だよ。それに色々とメリットもあるから入っておいた方がいいと思うよ」


「ん〜、じゃあ入会します。どっちにせよ強くならないといけないのは一緒ですから」


「では後でギルドに行こう。時間は大丈夫かな?」


「大丈夫です」


「分かった。じゃあ手続きだけはしておくね」


「お願いします。ちなみに祓魔師はどんな感じ?」


「祓魔師もそんな感じやな。ただ、狩人とは違い、祓魔師は万年人手不足や。魔術師がそもそも少ないからの。入会したら扱き使われるかもしれんぞ?」


「まぁ、お手柔らかに頼みたいんだけど。うん出来る限り頑張るよ」


「あいよ〜。こっちも連絡しとくわ。明後日以降で大丈夫やろ?」


「それは良いんだけどなんで明後日なの?」


「明日から土日やん。せーちゃんとデートしたいやろ〜?」


 父さんがニヤニヤしながら尋ねてくる。


「あ、なるほど。うん。せーちゃんとデートしたいし、明後日でお願い」


「ほーい。りょーかーい。ちなみに名前は『風の枝』や。儂が所属しとった所やで。魔族も多い祓魔師の協会やから安心し〜や」


 という訳で祓魔師と狩人の両方に所属する事になった。ここまでならば問題は無かったのだが、母さんと姉さんが目を覚ました事で一悶着が起きるのをこの時の俺はまだ知らない。

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