第42話 嫁の両親と挨拶②

「ミナトくんよく来たね。私はノヴァ・ユース・ベルガンド。セシリーの父だよ」


 せーちゃんのお母さんことリディアさんに奥の部屋に案内されて扉を開けるとそこにはせーちゃんのお父さんがいた。リディアさんの時も思ったが、若いな。実年齢は分からないが、見た目は20代前半である。短めな赤髪に空を思わせる青い瞳。身長は190cmと言ったところ。体格は鍛えられているのが服の上からも分かる。これまた、男前なお父さんである。


「はじめまして汐見湊です。セシリーさんとお付き合いさせていただいております。本日はお時間を頂きありがとうございます」


「ふむ。精悍な顔に力強い目だ。それに美しい魔力だ。清流の如く澄んでいる。それにこの魔力量は…」


 そこでノヴァさんは少し考える素振りをした。


「セシリーの眷属になってまだ数日と聞いたが、魔力量が通常の上位悪魔アークデーモンと比べ遥かに多いな。何か鍛錬でもしているのかい?」


「セシリーさんに頼んで虚ろの庭ホロウ・ガーデンに行かせてもらいました。そこで魔獣達と実戦形式で鍛錬を行いました」


「ほう、虚ろの庭ホロウ・ガーデンとは随分本格的だね。どうしてそこまで?」


「セシリーさんを守りたいからです。僕はまだ上位悪魔アークデーモンになって日が浅いですし、昔みたいに何も出来ないままでは嫌だったので」


「ふむ。目に嘘は無い。なるほど。あの時はセシリーが迷惑をかけたね。私達もあんな事になるとは想像もしていなかった。この十年セシリーは君を想いながら鍛錬していた。どうやらセシリーとミナトくんは似たもの同士だったようだな」


「ありがとうございます」


 せーちゃんと似たもの同士か。お世辞でも嬉しいな。


「所でミナトくんは何か話があるんだろう?」


「はい」


 そこで呼吸を整え


「セシリーさんと結婚したいと考えています。どうか、セシリーさんを僕にください」


 頭を下げる。創作でよく見かけるのは「お前に娘はやらん!」と怒鳴られるのだが、そうなった場合は納得して貰うまで何度も頭を下げるつもりだ。だが、ノヴァさんの答えは違った。


「セシリーとの結婚か…。父親としてはとても複雑だけど、セシリーはミナトくんがいたから頑張っていたのを知ってる。君が居たからセシリーは生きているんだ。大袈裟と思われるかもしれないが、あの時のセシリーは君に触れられない悲しみに暮れていた。それはもう、見てられない程にね。でもそんなセシリーを支えたのは君との約束だ。お陰でセシリーは立ち直りこうして元気を取り戻した。そんな君となら許可を出してもいいかとも思っている」


「!それでは」


「まあ少し待ってくれ。結婚する条件として君に頼みたい事があるんだ」


「条件とは何でしょうか」


「そうだな。大きく分けて3つ。今からその一つをして貰いたい」


「今からですか?分かりました。何をすればよろしいでしょうか?」


「うん。そんな難しい事ではないから安心して。一つ目の条件なんだけど」



「私と一度戦って欲しい」

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