第41話 嫁の両親と挨拶①

「ミナくん緊張してる?」


「バクバクです」


 現在、俺はせーちゃんのご両親に挨拶するために魔界に訪れていた。魔界と言っても、おどろおどろしい訳でも、空が真っ赤な訳でもない。人間界と同じで青い空に白い雲。街並みは現代風と中世風が混ざったような光景。トカゲっぽいのが二足歩行で歩いていたり、ドラゴンや人よりも巨大な鳥が空を舞っている。空気中に漂う魔力に関しては人間界とは比べ物にならないぐらい濃い。そして


「せーちゃん、街を囲っているのって結界?」


「うん。魔獣避けの結界だよ」


 街全体を囲むように透明な壁がある。どうやら魔獣は何処にでも現れるらしく、それらを防ぐ為に結界があるんだそうだ。


「ミナくん、こっちだよ」


「うん」


 せーちゃんに連れられて歩いて行くと、一際大きな建物がある。城と言うか要塞か?質実剛健と言った感じで余計な装飾は見当たらない。代わりにとても堅牢そうだ。


「ここだよ。ミナくん、準備はいい?」


「深呼吸させて」


 大きく息を吸い込み、ゆっくり吐き出す。二度繰り返す。


「よし、行こうかせーちゃん」


「そうだね。でもその前に」


「んお?せーちゃん?」


「ギューッ」


 せーちゃんにいきなり抱き締められた。一体どうしたんだろう。


「大丈夫だよ。私がそばにいるから」


「せーちゃん…」


 どうやら不安を汲んでくれたようだ。せーちゃんの温もりに心が落ち着いてくる。


「ありがとうせーちゃん」


「どういたしまして。ミナくん行こう」


「キャー!ラブラブね!二人とも熱々だ〜」


 聞き慣れない女性の声が聞こえたので振り向くと銀色の髪の女性が扉の前に居た。


 ハーフアップにした銀色の髪に翡翠色の瞳。雪の様に白くきめ細かい肌。タレ目がちの瞳。形の良い眉。筋の通った鼻。薄桃色の唇。背丈は170cm半ば。服の上から分かるメリハリのある身体。年齢は20歳前後だろうか。せーちゃんに良く似ている。紛れもなく美少女だ。せーちゃんのお姉さんだろうか。とりあえず詮索は後にして挨拶せねば。


「はじめまして。汐見湊と申します。セシリーさんとお付き合いさせて頂いております。こちら、僕が住んでる街の名物の水饅頭となります。よろしければ召し上がってください」


「あら〜、ご丁寧にどうも。ミナくんでしょ。セシリーから話は聞いてるわ!写真よりもずっとイケメンね!とても誠実で優しそうだし、セシリーは良い男の子を捕まえたわね!」


 せーちゃんのお姉さん?はニコニコしながら話しかけてくる。結構フレンドリーな方だ。せーちゃんは何だか恥ずかしそうにしている。やはり身内に見られるのは恥ずかしいのだろう。


「も〜、お母さん止めてよ、恥ずかしいでしょ」


「良いじゃない。娘にやっと春が来たんだから。ずっと想っていた子と結ばれるなんてロマンチックよね〜」


「…え?お母さん?娘?」


 今の言葉が正しければ姉妹ではなく母子となる。せーちゃんのお母さん若過ぎない…?


「あ、そう言えば自己紹介がまだだったね。私の名前はリディア・マリー・ベルガンド。セシリーの母です♪」

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