第38話 祓魔師と挨拶

「そうだ。湊くん、セシリアさん。もうちょっとしたら祓魔師達が来るけど良いかな?」


「え、何が?」


「状況の説明をしてほしいんだけど」


「え〜、面倒」


「同じく」


 せーちゃんが嫌そうに顔をしかめる。正直俺も面倒だし、帰りたい。


「そこを何とかお願い」


「…どうする?ミナくん」


「俺達に危険はないんだよな?」


 危険があるならば今すぐ帰る。


「いきなり祓おうとする人は居ないでしょ」


「……」


「……」


「何?どうしたの二人共」


 いきなり人を拘束して祓おうとした人がなんか言ってる。それも無自覚かぁ…。


「…まあいいか。私やミナくんを傷つけようとしたら燃やすだけだよ」


 せーちゃんが物騒な事言ってる。


「ちょ!止めてよ、上位の祓魔師に頼んだんだからね!」


 六花が慌てて止める。祓魔師の階位が分からないが、六花も高いんじゃなかったっけ?一等祓魔師って言ってたような。


「で、いつ来るんだ?」


「もうすぐ来るはずだけど…あれ?」


「どうした?」


「さっきまで後ろにいたはずだけど…1回連絡してみるから待ってて」


「よし、ミナくん帰ろう」


「せやな」


「待ってって言ってるでしょ!」


 そして六花が連絡を取り出す。電話から漏れる声を聞く限り、どうやら男女二人のようだ。最初は静かに話していた六花が悲鳴に近い大声を上げる。


「どうして一本道で迷えるんですか!?方向感覚どうなってるんですか!?」


『ごめんね〜リッちゃん』


『申し訳ない』


「いいから早く来てください!待たせてるんですから!」


『りょ〜か〜い』


『了解だ』


 すると六花は申し訳無さそうにこちらに頭を下げる。


「ごめんなさい…道に迷ったみたいです…もうちょっとだけ待ってください…」


「一本道なのに?」


「むしろこの道しかないよね?」


 龍尾山は歩道が整備されており、迷う事は無い。迷ったとしても数分山を下れば街に辿り着く。何処を歩いたらそうなる?獣道でも入ったか?


「うぅ…。実は1人は極度の方向音痴でもう1人は超マイペースなんです…」


「色々大丈夫か、それ」


「問題しか感じないんだけど」


「お恥ずかしい限りです…祓魔師としては頼りになる二人なんですが…それ以外は残念な方達なので…」


 俺とせーちゃんが茶々を入れつつ、方向音痴とマイペースな祓魔師を待つ。


◆◇◆

「待たせたな」


「無事辿り着けたね〜」


 現れたのは赤髪の男と黒髪の女だった。


「待たせたな、じゃないですよ!厳島いつくしま先輩!もう帰ろうとする二人を引き止めるのに苦労したじゃないですか!」


「すまない…。真っ直ぐと聞いたんだが」


「…一応確認しますけど、歩道を歩いたんですよね?」


「いや?突っ切った方が早いと思って山道を登ってきた」


「先輩は方向音痴なんだからちゃんと歩道を歩いてください!」


「あはは〜リッちゃん、ユマくんごめんね〜。目の前に猫がいたからつい追いかけちゃった☆」


「追いかけちゃった、じゃないんですが!?小鳥遊たかなし先輩、緊急だって言いましたよね!?」


「反省はしてる〜後悔はしてないよ〜」


「あぁもう!助けてゆーくん!もう嫌だ!お姉ちゃん疲れたよー!」


「姉ちゃんお疲れ」


 六花が泣きそうな表情になっている。儚げな容姿とは裏腹に感情豊からしい。苦労性とも言う。悠馬は六花の頭を撫でている。


「それで、彼らが?」


「あ、はい。こちらセシリア・ローズ・ベルガンドさんと眷属の汐見湊くんです。セシリアさん、湊くん、こちら『風の枝』に所属する祓魔師の厳島いつくしまたつき先輩と小鳥遊たかなし愛莉あいり先輩です」


 六花が紹介してくれた。赤髪の男が厳島、黒髪ミディアムヘアの女が小鳥遊というらしい。


「はじめまして。セシリア・ローズ・ベルガンドです」


「眷属の汐見湊です。上位悪魔アークデーモンです」


「ああ、お初にお目にかかる。厳島樹だ。北条から話は聞いている。ベルガンド一族と出会えるとは光栄だ。それにリグルを止めてくれてありがとう。これで被害者はいなくなる」


「小鳥遊愛莉だよ〜。よろしくね〜セシリンとミナっち。二人とも強そ〜。セシリンはともかく、ミナっちはアークデーモンになってまだ数日じゃなかったっけ〜?」


 真面目そうな厳島と緩そうな小鳥遊。祓魔師は中々キャラが濃いようだ。

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