第36話 VS合成獣と決着

「グロロ…」


 見るだけで精神をゴリゴリ削られそうな見た目の合成獣キメラと対峙する。触手と背中の腕がうねうねしている。正直気持ち悪い…。


「27号!ソイツを倒せ!僕達を助けろ!」


「グロオオオォォォ!!」



リグルの命令で合成獣キメラが咆哮を上げた。どうやら27号と言う名前(?)らしい。


 百足のような脚で突撃してくる27号。存外に早い。氷の壁を20枚展開し、迎撃準備を整える。27号が1枚目に衝突し、そのままの勢いで壁を破壊。氷の破片を撒き散らしながら、一心不乱にこちらへ向かおうとする。そこでせーちゃんは距離を取りながら構える。


「『炎槍』」


「グロロオオオオ!!」


「やっぱり硬いね。いや、再生力が凄いのかな。ミナくん!」


「任せろ『凍結』」


「グロ!?グロオ!!」


「『氷槍』『氷壁』」


「グォルアア!?」


「『爆炎』」


「グォアアアアアアア!!」


 せーちゃんの炎の槍が直撃し、27号の背中の腕と胴体の一部が焼失するが即座に再生し、何事もなかったかのようにこちらに突撃してくる。


 せーちゃんの合図で地面を凍らせ、身体が傾いた箇所に槍を設置し、ダメ押しに頭上から氷の壁を降らせた。クジュッ!という肉を貫く鈍い音と共に27号の身体が串刺しになる。痛みに悶絶する27号にせーちゃんが追撃する。


 せーちゃんの手のひらにビー玉ほどの火球が生まれる。その火球を27号に発射し、着弾すると身の丈の3倍に炎が膨れ上がる。そのまま爆炎に呑まれ、熱に苦しむ悲鳴を上げている。


 急速な変化で27号の身体には大きな被害が生じており、腹部がえぐれ、脚部の8割が喪失、背中の腕は消え去り、虎と狼の双頭の内、虎の頭が消し飛んでいる。


「これでもまだ生きてるね。ミナくん。アイツの傷口を凍らせてくれる?」


「オッケー。『凍結』」


「グ!?グロオオオ!!」


「暴れると更に苦しむぞ。『氷槍・虚数距離』」


「グロオオオオオオオオオオオオオオ!!」


 せーちゃんの指示で27号の傷口を凍らせて、再生を妨げる。傷口は冷気を纏いながら瞬時に凍りつき、肉体の機能が一時的に止まる。必死に抗おうとしているが、先程に比べて力は弱い。身体の内側に入り込んだ俺が作り出した水を凍り付かせ、内側から全身を貫く様に槍を作り出す。その状態でさらに傷口を凍り付かせ、止血。再生を阻止する。


 もはや死に体だが、残った狼の目がこちらを憎悪の視線で見据えてくる。まだ戦意は消えないようだが、次の瞬間、憎悪は恐怖に変わる。それはせーちゃんが放とうとしている魔法を見たから。人の背丈ほどの火球を見たから。


「これで終わりにしようかな。消し飛べ『大爆炎』!」


「グロロロロロロロロオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


 せーちゃんが放った巨大な火球は27号が触れるや否や、爆発した。咄嗟に氷の壁を二つ作り出す。一つは襲いかかる超高熱から自分とせーちゃんを守る為に。もう一つは27号を囲む様に半球型の壁を展開し、逃がさない為に。27号は断末魔を上げ暴れていたが、やがてに力尽き、灰へと変わった。


「う、そだ。そ、そんな…27号が…」


「リグル様…」


 リグルは呆然自失と言った感じで灰になった27号を見つめており、カスミはそんなリグルに何と声を掛ければいいのか分からない様子。


「決着かな、ミナくん」


「だな。せーちゃんのお陰だよ」


「ミナくんが頑張ったからだよ」


 戦いは終わり、俺達は互いに健闘を讃え合うのだった。

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