第33話 再会と会敵

 六花に悠馬を助けると誓った後、俺達は龍尾山に時空間魔法で飛んだ。山の麓に辿り着くとそこには


「せーちゃん、これはなに?」


「結界だね。おそらく人避けの為に張られた物だよ」


 山全体を覆うように透明な壁か何かがあった。せーちゃん曰く人避けの結界だそうだ。外と中を隔てるように囲われている。


「てことはこの中に悠馬が」


「そうだね。そしておそらくリグルもいるはずだよ」


 人を材料に合成獣キメラを作った魔人。悠馬がその材料にされかけている。立ち止まった所で何も変わらない。時間が過ぎていくだけ。なら、進むしかない。


「行こう。せーちゃん」


「うん。ミナくん」


 俺とせーちゃんは結界の中に入った。その瞬間、身体が重く感じた。身体に纏わりつくような気配が漂っている。そしてその気配は山頂から感じる。


「山頂からか」


「みたいだね。ヨル、山頂まで繋いでくれる?」


「は〜い。山頂からすごい魔力を感じます〜。お気をつけて〜」


「ありがとうございますヨル先生」


「ありがとうヨル。山頂まで行ったら安全な場所に隠れておいて」


「は〜い」


 ヨル先生に空間を繋いで貰って準備をする。山頂に着いた瞬間戦闘になりかねないからだ。虚ろの庭ホロウ・ガーデンで狩った龍の鱗から作った槍を構える。槍の穂先から柄尻まで真紅であり、最初に戦った赤龍と呼ばれる赤い鱗を持つ龍の素材を使った槍である。金属と比べ軽いのにどんな素材よりも頑丈である龍種の鱗は非常に優れた武器になる。予備として同じく赤龍から作った山刀マチェットを腰のベルトに差して準備は完了。


「魔力が伝わってくる。なんだか嫌な魔力…。ミナくん、出たらすぐに構えて」


「分かった」


 せーちゃんが注意を促す。頷き、いつでも戦えるように構えながら進む。


「…!ミナくん!」


「フッ!」


 せーちゃんからの呼び掛けで槍を構える同時に、何かが勢い良くぶつかってきた。腕に伝わる重さを受け流すようにして振り払う。そしてせーちゃんを守りながら距離を取り、ぶつかってきた物の正体を確認すると


「…!悠馬!大丈夫か!?」


「汐、見…?どうしてここに…?」


「六花に頼まれたんだ。悠馬を助けて欲しいって。待ってろ、今怪我の治療をする!」


 探していた悠馬だった。全身傷だらけだが、意識はしっかりしているし、何処か欠損している様子は無い。無事であったことに安堵しつつ、治癒魔法を施しながら悠馬に尋ねる。


「悠馬、何があった?」


「あ〜、まぁ姉ちゃんに聞いているかも知れないけど街の巡回中に化け物に襲われてな。姉ちゃんが危なかったから庇ったら喰われちまった。隙を見て何とか脱出したのはいいんだが、化け物と『接ぎ木』と戦闘になってな。ふっ飛ばされた所に湊達が居たって感じだな」


「やはり、リグルの仕業か。奴らはこの先にいるのか?」


「ああ。俺を追ってこちらに来ていた。もうすぐ来るはずだ」


 悠馬の言葉を裏付ける様に前方から足音が近づいてくる。距離としてあと僅か。そして遂に姿を現した。


「おいおい、お前はボールか〜?人間は良く跳ねるな…!って貴様ら誰だ!?何故この山に入っぐぇっ!」


「お前がリグルか」


 姿を現したリグルを柄尻で鳩尾みぞおちを突き、黙らせ、氷の鎖で全身を縛りあげてから尋ねる。


「な、なな、何故私の名を知っている!?ハッ!そうか貴様らも祓魔師か!?そうなのか!?」


「俺達が祓魔師に見えるか?」


「だってそうだろう!?私を邪魔するのは祓魔師ぐらいだ!だから貴様らも…え?もしかして貴様らは魔族、か?」


「ようやく気付いたか?」


「な、なな、何故魔族が私の邪魔をする!?」


 そんな奴の言葉をせーちゃんが代わりに答えた。


「人間界の生物を故意に傷付けてはいけないのを知らないの?魔界でも重罪だけど」


「何だ藪から棒に!って、待て!待ってくれ…!銀色の髪に翡翠の瞳、まさかお前、いや貴方は…」


「私?私はセシリア・ローズ・ベルガンド。『狭間の守り手』の末裔だよ」

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