第32話 六花の涙と決意
「六花!大丈夫か!何があった!」
「汐見くん…セシリアさん…」
六花の助けを聞いた俺達はヨル先生の時空間魔法で彼女の元に飛んだ。六花は泣き腫らした目でこちらを確認すると俯きながらポツリポツリと語りだす。
「汐見くん達と別れた後、私とゆーくんで街の巡回してたんだ…。そしたら、後ろから突然謎の化け物が現れて、私達は応戦したけど、全く歯が立たなくて、私が…私が殺されそうになったのをゆーくんが庇って、それで、それで…うぅ…グス…」
嗚咽混じりに六花が語る。彼女自身も信じたくない事なのか頭をしきりに横に振っている。
「六花、ゆっくりでいい。教えてくれ」
「…ゆーくんが、食べられちゃった…」
「…!それでその謎の化け物はどこに行ったんだ」
「…あっちの山の方に飛んで行った」
六花が指差したのは
「私、私のせいで、ゆーくんが…ゆーくんが…ごめんなさい…ごめんなさい…」
六花は頭を両手で抱え、ペタンと座り込んでしまった。弟を食われ平気でいられる奴はいないだろう。それも仲が良い弟なら尚更だ。
「…せーちゃん。これはリグルの仕業だと思う?」
「確証はないけど、可能性が高いと思う。祓魔師なら魔獣を見慣れているだろうし、そんな彼女が正体が分からないのは単純に珍しいのか、自然では存在しない人為的に作られた存在、それこそ
「そっか。そうだね」
せーちゃんの言葉に頷く。だとするなら、悠馬は材料になる可能性が高いという事だ。
「六花。俺達は今から悠馬を助けに行く。六花は他に助けが呼べるなら呼んでくれるか?」
「…!私も!私も助けに行く!ゆーくんは私の大切な人だから…ゆーくんは誰よりも大切な人だから…」
「んー、厳しい事を言うけど止めておいた方がいいかな。だって貴方では歯が立たなかったんでしょう?貴方まで食べられたら、それこそ彼に申し訳が立たないよ」
「でも…でも…」
せーちゃんが冷静に指摘する。言っている事は正論だ。六花まで食べられたら何の為に悠馬が庇ったのか。だが、六花は頭を横に振って、否定しようとする。気持ちは分かる。大切な人が危ない目にあってジッとしておくのは辛いものがある。
「六花。悠馬は必ず俺達が助ける。だから六花には今出来る事を頼みたい。悠馬の生存確率を高める為には六花の協力が必要なんだ。頼む」
「汐見くん…。…分かった。他の助けを呼んでくる。それが終わったらゆーくんを助けに行く。それで良い?」
「ああ。助かる」
六花の目に光が灯る。力強い意志を感じさせる目だ。絶望を前にそれでも立ち上がろうとする六花は強い。
「それじゃあ行ってくる」
「うん。汐見くん、セシリアさん、ゆーくんをお願いします」
六花が頭を下げてきた。答えは一つだ。
「任せろ」
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