第31話 因縁の相手と共通点

「せーちゃんの予想通りだったな」


「まさかだね」


 あの後、北条姉弟に話を聞いて『接ぎ木』は予想通りリグル・モルゲンだったようだ。では、グリムというのが誰かと言うと


「『魔神教』か…」


「変な所で接点があるんだね…」


『魔神教』は魔界にかつて存在した魔神と言う文字通り神のような存在を崇め奉る教団の事である。どうやらグリムは魔神教に入団している魔族であり、リグルの合成獣キメラを作る魔法を利用しているとの事。


「でも何でリグルの力を利用しているんだ?」


「北条姉弟の話からすると魔神の器を作り出しているんじゃないかって話だけど…そんなの作れるの…?魔神って私のような魔人よりも遥かに強いって話だけど…」


 せーちゃんが首を傾げている。せーちゃんの疑問は俺も感じていた事だ。それに


「人間を材料にして意味あるのか?」


「分からないんだよね…どうして人間を狙うのか」


 そうだ。魔界や魔族の事について詳しくないが人間を材料にして何の意味があるのか。それは不明である。それと今回の事件と直接関係あるか分からないが


「(魔神教か…せーちゃんに呪いをかけた奴らか…)」


 俺が幼い頃。あのアランとか名乗ったフード男が所属している教団である。そしてせーちゃんを苦しめている集団。それを考えると怒りで我を忘れそうになる。何が目的でせーちゃんを攫おうとしたのか。呪いを掛けた理由は何なのか。アランと何か関係があるのか。考え出すとどんどん魔神教を憎く感じる。


「ミナくん」


「ん?」


「怖い顔してるよ」


「あ、ごめん」


「何考えてたの?」


「…大した事じゃないよ」


「本当に?」


「う〜ん。今回の事件とあんまり関係ないかもだし」


「ますます気になるんですけど?」


「あー、うん。今回の件が片付いたら教えるよ。それよりも今後の事を考えよう」


「じゃあ約束だよ。後で教えてね。う〜んそうだなぁ。北条姉弟の話によるとどうやら被害者は最低でも10人。この街で1人出ている。そしてまだ増える可能性がある、か」


「年齢、性別関係なく被害にあったって言ってたな」


「そうだね。後共通点があるとすれば時間帯かな。どうやら深夜に攫われているみたい」


「ただ、場所は全部バラバラだからなぁ」


「うん。この近辺というだけで特に繋がりがある感じでもなさそうだし、無差別なのかな」


「何とか足取りを、掴めたら良いんだけど…」


「う〜ん。被害にあった場所にある魔力を感知して追いかけるのも時間が経ちすぎているし」


 八方塞がりだ。どうしたものか。頭を抱える俺達だが意外な展開を迎える事になる。それは北条六花からの一本の電話だった。涙ながら縋るような声で彼女は懇願してきた。


『お願い汐見くん…!ゆーくんを、ゆーくんを助けて!!』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る