第29話 とある祓魔師の独り言①
とある馬鹿な女の話をしよう。
祓魔師の家系に産まれた、義理の弟と結婚したいだけの何の取り柄もない女の話を。
私達の一族を含め他の祓魔師の一族に厳命されている事がある。
ベルガンドの一族を怒らせるな
ベルガンドとは魔人の一族であり、現在の魔界を統治する王族である。そして、人間界と魔界の境界線である『狭間の世界』を管理しており、人間界に魔獣が侵入するのを防いでいる『狭間の守り手』でもある。つまり、魔族の王であり、人間にとっては魔獣の防波堤になってくれている一族である。彼らが人間を見放せば人間界が滅ぶ。大量の魔獣によって蹂躙されるだろう。
魔獣は文字通り魔力を持った獣。それもその大半が飢えた獣だ。人間、魔族関係なく喰らおうとする危険な存在である。その上通常の兵器では太刀打ち出来ないほど強大な力を持つ。祓魔師は魔獣から一般人を守る為にある。
どうして魔族であるベルガンド一族が人間を守ってくれているのかは不明である。昔人間とどういうやり取りがあったかは分からないが、人間に対して友好的な者が多い一族らしい。とはいえ、彼らも無償でやっている訳では無いだろうし、何かしらの契約を結んでいるのかも知れない。
話が逸れてしまった。私の話だった。とはいえ語る事は少ない。祓魔師の家系に生まれた事、父親は私が幼い頃に殉職している事。母親が再婚して義理の弟であるゆーくんこと悠馬くんと家族になった事。とある事情から仲良くなり、いつしかゆーくんに恋した事。ゆーくんが抱える秘密を知ってさらに仲良しになった事。ゆーくんといつも添い寝している事。ゆーくんの訓練に付き合っている事。ゆーくんの寝顔をスマホの待ち受けにした事。ゆーくんのベッドで自分を慰めていた事。それがゆーくんにバレたので勢い余って押し倒した事。行為の最中に両思いだと判明した事。恋人として付き合うようになった事。両親に打ち明けて受け入れて貰った事。結婚を視野に入れている事。
語るとすればそれぐらいである。我ながら平凡な乙女な日常である。だが、ゆーくんがいればそんな日常に彩りが生まれた。ゆーくんは属性魔術は苦手だけど私を幸せにする魔術は使えるようだ。
ベルガンド一族の話をした後に私の話をした理由?それは
「貴方がミナくんを拘束した祓魔師なんだ…へぇ…」
ベルガンド一族を怒らせてはいけない事は重々承知していた。だが、魔界の王族だし、平凡な私が出会う事は無いだろう。
そう思っていた時期が私にもありました。
「そう言えば名乗ってなかったね。私はセシリア・ローズ・ベルガンド。君達にはミナくんがお世話になったみたいだね…うふ、うふふ…」
お分かり頂けただろうか。私は今人生最大の危機に瀕している。
昨日出会った
あ、私終わったわ。ゆーくんのお嫁さんになりたかったなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます