第28話 嫁と会話と仮説
「せーちゃんを巻き込むのは嫌なんだが…」
「それは私も同じだよミナくん。ミナくんが巻き込まれて良い訳じゃないし傷付くのはもっと嫌だ。でもミナくんがしたい事なら出来る限り叶えたいと思っているの。だから私も手伝う」
「でも…」
「ダメだよ。ミナくん」
困ったな。せーちゃんを巻き込んでしまった。何とか説得しないと。でなければ、せーちゃんに負担がかかってしまう。だから断ろうとした。だがせーちゃんは俺が言おうとした言葉を遮って真っ直ぐに告げる。
「ミナくんは私を巻き込みたくないって思ってくれているみたいだけど私はミナくんに巻き込まれたいの。どんな困難だって構わない。一緒に乗り越えるつもり。だって私達は夫婦だよ?どうしてミナくんだけが背負わなきゃいけないの?私はそんなに頼りないの?ミナくんが背負っているものを私にも背負わせてよ」
「…せーちゃん」
あぁ、どうやら俺は無意識にせーちゃんを庇護すべきだと思っていたようだ。違うだろう。夫婦は支え合い共に歩むものだ。俺は彼女を省みず、勝手に一人で首を突っ込もうとしていた。逆の立場ならどうか。せーちゃんが一人で全て背負って危ない事に足を踏み入れようとしている。そんな時どうするか。決まっている。絶対に止めるだろう。あるいは手伝おうとするだろう。今のせーちゃんのように。
「…ごめんせーちゃん。せーちゃんに言われるまで気付かなかった」
「ううん。私こそごめんね。でもミナくんの力になりたいの。だから私も手伝わせて、お願い」
「ああ。せーちゃんありがとう。手伝ってくれるか?」
「うん!もちろん。ミナくんが行く所は私も行く所だから」
せーちゃんと笑い合う。あぁ、まだ婚約の段階だが言わせてくれ。せーちゃんと結婚出来て本当に良かった。
◆◇◆
「せーちゃんは『接ぎ木』って言葉に何か思い当たる?」
「『接ぎ木』…。う〜ん。人間界で私達魔族がどう呼ばれているか分からないから何とも言えないけど、似たような名前で呼ばれていたのは居たよ」
「それって、どんな魔族なんだ?」
「正直噂だから信憑性はないかも。ただ、魔獣や他の動物の身体を使って
「
言葉に詰まる。嫌な予感しかしない。
「その言葉通り混ぜ合わせるの。方法は色々あるけど、魔法で異なる動物の身体をくっつけて、継ぎ接ぎだらけの生物を作り出すの。ハッキリ言って非効率だよ。魔法生物を作った方が魔力の消費も少ないし、手間も掛からないのに」
「…詳しいね。
「上級魔導書に書かれていたから試しに一度作ろうとしたんだけど魔力の消費量が大きいし、制御が難しいし、そもそも複数の動物の身体が必要だから手間が掛かるしで、労力には全然釣り合わない欠陥魔法って書かれていたから作るのは止めたの」
「そうなんだ。良かった…。せーちゃんが作ったって言われたらどうしようかと…。それとだけど、もしかしてそいつは魔人だったりする?」
「うん。確か魔人だったよ」
「そいつの名前がグリムだったり?」
「ううん違うよ。そいつの名前はリグルのはず。リグル・モルゲンて言う名前だよ」
「仮にそのリグルって奴が北条姉弟の言う事件に関わっているとしてどんな事件だと思う?」
「推測でしか無いけど、祓魔師は人間界を守る為に存在する魔術師。そんな祓魔師が関わっているという事は人間達に何かしらの被害があった、もしくはこれから起こるという事。そしてそれがリグルが引き起こした事なら多分」
せーちゃんは一拍置いて告げた。考え得る限り最悪のシナリオを。
「
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