第23話 友人と学校の日常
せーちゃんとの婚約についてユズと藤代に話す。魔法や魔族の事については割愛。いきなり言われても信じられないだろうし。十年前に結婚の約束をしており、家庭の事情で引っ越して行った事にした。
「まぁ、こんな感じでセシリー、せーちゃんとの婚約となった感じかな」
「幼馴染なんだ。そのセシリーさんて」
「ああ。十年来の親友でもある」
「幼馴染との婚約かぁ。…うん。いいね。ロマンチックだ」
しみじみ語るユズ。藤代はと言うと
「(幼馴染と結婚の約束…ユズは…覚えているのかな…私も…いつか…)」
何やら呟きながらユズを見つめている。その表情は熱を帯びている。幼馴染と言う関係にユズを重ねたのかも知れない。
藤代の反応から分かる通り、藤代はユズに片思いしている。ただ、その性格のため、中々告白出来ないでいる。
割と周囲にはバレバレだが、本人はバレていないと思っているし、ユズは気付いていないのか、のほほんとしている。ツンデレと鈍感系の組み合わせである。王道ではあるが、ユズの鈍感さは筋金入りで藤代が中々不憫だ。
そんな中、ジッとこちらを見つめる女生徒が一人。敵意も悪意も無いが、好意的とも言えない視線だった。観察という言葉が適切かも知れない。
「(うるさかったかな)」
その女生徒に目を向けると、スッと逃げるように立ち去った。
「(北条だっけ、あの子。悪い事したかな。ごめんな)」
北条 六花
確か自己紹介の際そう名乗っていた。全体的に儚く雪を感じさせる美少女である。腰まで伸びた色素が薄めの髪に水色に近い瞳。肌は透き通るように白く、華奢である為、触れれば壊れてしまいそうだ。
騒ぐつもりは無かったが迷惑を掛けたのだろうか。心の中で謝りつつ、ユズ達との会話に戻る。
「セシリーさんとどこまで行ったの?デート?手を繋ぐ?それともキスとかもした?」
「ユズ、流石に早すぎるわよ。まだ再会して一日でしょ」
「それもそうだね。じゃあこれからかな。ミナ何でも相談してね。力になるから」
「そうよ。汐見、私達に何でも言いなさい。一人で何でもしようとしない事。いいわね?」
「ん。分かった。ありがとう、ユズ、藤代」
気遣ってくれる二人に礼を言う。この二人には良く助けられている。本当に良い友人に恵まれたな。
そんな事を思っていると、始業のチャイムが鳴る。ユズと藤代は自分の席に戻って行った。さて、俺も一時間目の準備するか。確か今日英語の小テストがあったな。昨日色々あったから勉強していないが何とかするしかないな。
「(汐見、湊…何故貴方は…)」
湊を見つめる女生徒が一人。瞳に困惑と悲哀が浮かんでいる。
「(何故人間を止めたの?)」
「(もしも、学校の皆を傷付けるようなら)」
「私が、貴方を祓う」
短く、だが確かな決意を込めて。
北条六花は呟いた。
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