第22話 行ってきますのちゅーと友人達

 翌日。せーちゃんはお弁当を作ってくれて玄関で見送ってくれている。


「それじゃあせーちゃんお弁当ありがとう。行ってきます」


「あ、ミナくん待って。何か忘れてない?」


「ん〜?なんだろう」


 何か忘れているのか。教科書、筆記用具、せーちゃんが作ってくれたお弁当、水筒。今日は体育がないため体操服は必要ない。はて、何を忘れているのか。


「む〜。やっぱり忘れている…」


 せーちゃんは頬を膨らませてプンスカしている。リスみたいで可愛い。


「ミナくん。私達は何?」


「何とは?」


 哲学的な質問だ。だが、存在の意義を聞いているわけではあるまい。


「どんな関係?」


「婚約者でしょ?」


「え?夫婦だよね?」


「あ、そっちか」


「そっち?」


「幼馴染で親友もあるよね」


「じゃあ、幼馴染で親友で恋人で婚約者で夫婦だね」


「属性山盛りだな」


「ミナくんとならどんな関係でも嬉しいけどね。って話が逸れちゃった。ミナくんの忘れ物の話だよ」


「ゴメン。俺は何を忘れているんだ?」


 分からないので素直に聞いてみる。するとせーちゃんは顔を赤く染めて


「い、行ってきますのちゅー…」


「なるほど」


 ベタだが確かに。それでは


「せーちゃん」


「ミナくん。んっ」


 せーちゃんにキスした。相変わらず唇プルプルである。俺もリップクリームとかした方がいいかな。


「それじゃ改めて、行ってきます。せーちゃん」


「行ってらっしゃい。ミナくん」


 せーちゃんが手を振って見送ってくれる。今日は良い日になりそうだ。


◆◇◆

 澤良木さわらぎ高等学校。偏差値はそこそこ。俺のアパートから徒歩約15分程の距離にある。一年は五組まであり、俺は一年二組に所属している。


「あ、おはよう、ミナ。今日もいい天気だね」


「おはよう、ユズ。相変わらずキラキラしてるな」


 教室の扉を開けると親友の有村結弦が挨拶してきた。相変わらず爽やかな笑顔である。


 ユズこと有村結弦は一言で言ってしまえば穏やかな美少年である。柔らかい色合いの茶髪にタレ目気味の瞳。身長は178cmとスラリとした長身である。


 少女漫画に出てくる正統派のヒーローのような容姿と誰にでも分け隔てなく、優しく気さくに接する性格で男女関係なく人気が高い。実際、中学の時からモテまくっていた。


「おはよう汐見。今日はサボらずに来たのね」


「おはよう藤代。昨日約束したからな」


 藤代麻奈は一言で言って委員長的な美少女である。ポニーテールにした黒髪につり目がちの瞳。身長は165cmと女子にしては高めでスレンダーな体型である。


 クラスの委員長を務めており、自他共に厳しい性格で、一見接し辛いが、友人思いで優しい所もある。美少女という事も有って男からは人気がある一人である。


 有村結弦と藤代麻奈は幼馴染で十数年来の付き合いらしい。俺は中学の時に二人と出会った。それ以来二人と良く遊んでいる。


「汐見。アンタ昨日の事、聞かせてもらおうかしら」


「あ、僕も気になってたんだ。昨日何があったの?」


 藤代が仁王立ちで腕組みながら、ユズが椅子に座りながら尋ねて来る。


「うん。それじゃあ話すよ。昨日あった事を」


 それから語り出した。昨日の事。せーちゃんの事を。

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