第21話 謝罪と添い寝

「私の初めて、貰ってください…」


 …

 ……

 ………はっ!あまりに衝撃的な言葉に意識が飛んでいた。何と言う破壊力だ。


せーちゃんは恥ずかしそうにモジモジしている。可愛い妻にこんなお誘いを受けてヘタレるのは男が廃る。据え膳食わぬは男の恥。それは分かっている。だがそれでも


「…俺はせーちゃんが好きだよ。愛し合いたい。一つになりたい。でも今はゴメン…!」


「え、ど、どうして…どうしてダメなの…?」


 せーちゃんは泣きそうになっている。勇気を出したのだろう。そんなせーちゃんに対して俺は最低だ。それでも俺は頭を下げる。


「まだせーちゃんのご両親にご挨拶していない!必ずせーちゃんを幸せにするって言えていないんだ!きちんと伝えないのは不義理だと思う!だからゴメン!ご両親に伝えるまで待って欲しい!」


「…!そっか。私もミナくんのご両親に挨拶していないや。そうだよね。先ずはご両親に挨拶だよね。ごめんね。気持ちが先走り過ぎた」


「俺こそゴメン!せーちゃんの気持ちを傷付けてしまった…」


「ううん。ミナくんが私を大切にしてくれているんだって分かって嬉しかったよ」


「本当にゴメン。代わりに俺が出来る事なら何でもするから」


 その言葉を聞いたせーちゃんの目が輝いた…気がした。


「ミナくん。今何でもするって言ったよね?」


「もちろんだ。せーちゃんに嘘は付かないよ」


「じゃあね、えへへ…」


 せーちゃんが嬉しそうに笑う。



 俺達は同じベッドで寝転んでいる。せーちゃんのお願いは一緒のベッドで寝る事。いわゆる添い寝だ。


「本当にこれでいいの?」


「ミナくんが何でもするって言ったんだよ?」


「それはそうだけど、これぐらいならいくらでもするよ?」


「本当!?約束だよ!」


 せーちゃんの瞳がキラキラ輝く。嬉しそうで何よりだ。


「ん〜ミナくんの匂いがする〜」


「臭くないか?風呂に入ったけど訓練で汗掻いているし」


「ううん。良い香りだよ。凄く落ち着く。ずっとこうしてたい…」


「そっか。それなら良かった」


 せーちゃんが抱き着いてきて胸元でスリスリしている。ニコニコの笑顔だ。匂いを嗅がれるのは恥ずかしいが、こんな笑顔を見せられてダメだとは言えないし、言うつもりは無い。


「ご両親の挨拶はいつにしようか」


「ん〜。私の両親ならいつでもいけると思うよ」


「いきなり押し掛けて迷惑じゃないか?」


「大丈夫だよ。連絡するから」


「ん〜じゃあ三日後にしようか。明日とかだといきなり過ぎるから」


「分かった。じゃあ三日に挨拶だね」


「うん。俺の両親はまぁ、三日後でいいんじゃ無いかな」


「適当だね?」


「うちの両親なら大喜びするんじゃない?せーちゃんみたいな綺麗な婚約者が出来て」


「もう、ミナくんは褒めるのが上手なんだから」


「せーちゃん限定だよ」


「えへ、えへへ…ミナくんミナくん」


「それじゃそろそろ寝ようか」


「うん。おやすみなさいミナくん」


「おやすみせーちゃん」


 こうして二人で眠りについた。

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