第16話 水と闇と初戦闘
「ミナさま〜今から『じっせん』ですが〜じゅんびはよろしいですか〜?」
「お願いします!」
ヨル先生との鍛錬を
「まずは〜レッサーウルフです〜。かみつかれるといたいので、気をつけてくださいね〜えいや〜」
ヨル先生の緩い掛け声と共に人間の二倍はある狼が二匹召喚される。どうやら精霊族特有の時空間魔法で別の空間から呼び出しているそうだ。
「グルル…」
レッサーウルフはこちらを警戒しているようだ。中々近寄って来ない。なら
「こちらから行くぞ。『氷槍』!」
「グオオオ!」
氷の槍を複数レッサーウルフに放つ。レッサーウルフは軽いステップで回避し接近してくる。中々速いな。ならば
「『凍れ』!」
「ギャン!?」
レッサーウルフの足元を凍り付かせる。ちょうど前脚が踏み込んだ箇所を凍らせる事に成功。一匹の体勢がバランスを崩し、転倒。その隙に氷の槍を地面から生成し、串刺しにする。レッサーウルフの胴体を貫いた後、数秒悶えていたがすぐに力尽きる。まずは一匹。
「グオオオ!」
「『氷壁』」
「ギャイン!?」
もう一匹が俺の後ろに回り込み突撃してきたが、事前に氷の壁を生成し攻撃を防ぐ。勢いを殺せなかったのか、そのまま壁に激突。悲鳴をあげた。
「『氷槍』」
「ギャン!」
怯んだ隙に氷槍で貫く。三本の槍が突き刺さり絶命。刺さりどころが悪かったのか即死したようだ。
「終わりか?」
「おつかれ様でした〜。始めてとは思えないぐらい戦えてましたよ〜。すごいですミナさま〜」
「ありがとうございます。ヨル先生のお陰ですよ」
「えへへ〜。もっとほめてもいいんですよ〜。うにゃ〜うにゃ〜、頭ナデナデしてくださ〜い」
「ヨル先生、よしよし、良い子良い子」
抱き着いて頭を擦り付けてくるヨル先生を撫でる。気持ち良さげに目を細めている。ふにゃふにゃ笑っている。幼い妹がいればこんな感じだろうか。何だか癒される…。
「水魔法の基礎は〜大丈夫そうですね〜。次は〜闇魔法で戦ってみましょ〜」
「闇魔法ですね。分かりました」
この戦いでは水魔法のみを使用する事を制限として戦った。ヨル先生曰く一度に複数の魔法を使用するのはまだ難しい為、今は一つの属性のみで戦ってみようとのこと。慣れてきたら複数の属性を使った戦闘に移るそうだ。見た目と雰囲気とは裏腹にしっかりと考えてくれている。頼りになる先生だな。
「では、闇魔法での戦いですよ〜ほ〜い」
ヨル先生の掛け声で再びレッサーウルフが二匹召喚される。先手必勝!
「『飲み込め』」
「ギャフン!?」
レッサーウルフの足元から闇で生成した沼を設置。そのまま闇の中に引きずり込む。断末魔と共に消えて行った。
「ワオーン!」
「『奪え』」
「ワゥゥゥ…」
闇をもう一匹に纏わせ生命力を奪い取る。みるみる衰弱し、最期には砂となっていった。
闇は停滞、鎮静、収束、吸収を司る属性。創作で良く見かける死霊術や洗脳といった魔法はまた別物らしい。とはいえ、闇属性は結構レアな属性らしく中々発現しないとの事。対になる光属性もレア度が高いようだ。SSRぐらいなんだろうか。
「お見事〜。そっこーですね〜さすがですミナさま〜」
ヨル先生はパチパチ手を叩きながら褒めてくれる。何だかくすぐったいが、嬉しいな。
「ヨル先生の教え方が上手だからですよ」
「うにゃ〜ぐりぐり〜なでなでしてくださ〜い」
再び頭を擦り付けてくるヨル先生。いかん。小動物に見えてきた。撫で回したくなる。
「良い子良い子」
「えへへ〜とけちゃう〜」
そっと頭を撫でる。表情は緩みきっており、ふにゃふにゃしている。幸せそうで何よりだ。
こうして、初戦闘は何事も無く終わった。明日は更に難易度を上げるとのこと。せーちゃんを守るにはまだ先は長い。一歩ずつ、着実に行こう。
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