第15話 精霊族と魔法の鍛錬

「それでは〜よろしくお願いします〜ミナさま〜」


「よろしくお願いします!ヨル先生!」


 何も存在しない白い空間。俺の前にはメイド服を纏った眠たげな幼い少女が一人。名はヨル。せーちゃんの使い魔の一人である精霊族の少女である。俺は今からこの空間で魔法の鍛錬を行う。ヨルはその指導してくれるようだ。


 どうしてこうなったかは、一時間前に遡る。


 せーちゃんのカレーを食べて二人でまったりしていた時に俺がせーちゃんに頼み込んだのが始まりだ。


「魔法の鍛錬がしたい?」


「ああ。俺は転生したばかりで魔法の使い方を良く知らない。せーちゃんを守る為に少しでも魔法が上手くなりたくて。魔法の鍛錬が出来る場所はある?」


「う〜ん。ミナくんの気持ちは嬉しいけど、どうだろ、何処か、あ!じゃあ、あそこがいいかな」


「あるの?」


「うん。ただ、あそこは、私だけでは行けない場所から…ヨル、いる?」


「お呼びですか〜?」


「魔法の鍛錬の為にミナくんを『虚ろの庭ホロウ・ガーデン』に連れて行ってあげて」


「は〜い」


 せーちゃんにヨルと呼ばれた少女はいつの間にか部屋にいた。


 黒髪のツインテールに眠たげな深い青色の瞳。メイド服を纏った小学生低学年ぐらいの少女である。のんびりとした雰囲気だが、この子も魔族なんだろうか。


「ミナくん。ヨルは私の使い魔、簡単に言うと家来みたいな子で、精霊族なんだ。精霊族は時空間魔法が得意な種族なんだよ。ヨル。こっちはミナくん。私の眷属で旦那様だよ」


「よろしくお願いします〜ミナさま〜」


 せーちゃんが説明してくれた。精霊族のヨルと言う子らしい。それにしても時空間魔法。強者感半端ない名前の魔法だ。精霊族というのも、超自然的というか、人間が触れられない存在っぽい。端的に言うと凄そう。


「よろしくお願いします。ヨルさん」


「は〜い。じゅんびが出来たら、お声がけくださ〜い」


「ちなみに、『虚ろの庭ホロウ・ガーデン』は時間という概念が無くて、こっちの時間と切り離されているから向こうで何時間、何日、何年、何十年鍛錬しても、こっちでは一瞬だし、歳も取らないから満足するまで鍛錬が出来るよ。それに周囲の魔力が高密度だからそこに座っているだけで魔力の鍛錬になるよ」


 五億年ボタンに似た感じなのかな。というか、本来の意味で反則チートなのでは?


「デメリットとして一つ目は本当に何も無い空間だから長時間居続けると精神に支障をきたしやすい事。二つ目はミナくんは上位悪魔アークデーモンだから魔力量的に問題無いけど、良くも悪くも魔力が高密度だから魔力が低い魔族は潰される事。後はデメリットではないけど、精霊族の力が無ければ辿り着けない事かな」


 なるほど、デメリットはあるのか。まぁ、そりゃそうだ。デメリット無しだと都合が良過ぎる。


「ちなみに、ミナくんはどんな鍛錬をしようと思っているの?」


「んー、とりあえず、魔法が上手く使えるようにする事が目標かな」


「だったら、下位の魔獣と戦う実戦形式はどうかな」


「魔獣?」


 魔族ではないのか?別の物?


「魔獣は言葉通り獣だよ。人間、魔族関係なく襲いかかる存在。魔界でも危険な存在だよ」


「なるほど。実戦形式の方が力になりやすい気がするからそうしようかな」


「うん。そうしようか。一つ目のデメリットはヨルがいるから大丈夫だろうし、それにミナくんの言う通り、魔獣と実際に戦って貰うから実力がつきやすいかな。傷を負ってもヨルが治癒魔法を使えるからよほどの事が無い限り大丈夫だし、いざとなればヨルにそこから出して貰うから」


「うん。そうする。ありがとうせーちゃん」


「どういたしまして。夫を支えるのが妻の役目だよ」


 そんな感じで鍛錬方法は決まった。


「じゅんび出来ました〜?」


「はい。大丈夫です」


「じゃあ、いきましょ〜」


「ミナくん気を付けてね。万が一だってあるから」


「うん。分かったよ。行ってきます。せーちゃん」


「行ってらっしゃい。ミナくん」


 そして冒頭に戻る。どうやらヨルに魔法を指導して貰えるようだ。だからヨル先生と呼ぶ事にした。


「それじゃ〜ミナさま〜魔法を教えますね〜。どんな魔法にしましょ〜」


「そうですね、攻撃魔法も覚えたいんですが、自分の身は自分で守りたいので、先に防御系の魔法を教えて頂けますか?」


「は〜い。分かりました〜」


こうして、俺の魔法の鍛錬が始まった。

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