第13話 嫁とご飯
「さて、カレーを作ろうか。ご飯は炊けてる?」
「朝に炊いているよ」
「オッケー」
せーちゃんと買い物して家に戻ってきた。何処から取り出したのか黒いフリフリのエプロンを着けていた。
「せーちゃん何か手伝える事ある?野菜切ろうか?」
「う〜ん。今日は私が作りたいからミナくん座ってていいよ」
「何もしないのは、ちょっとなぁ」
「いいからいいから。私の料理でミナくんの胃袋をガッチリ掴む予定だから期待して待ってて」
「ん。分かった」
せーちゃんにそこまで言われたなら仕方ない。大人しく座っていよう。ソシャゲでもしようかな。そこでふと、スマホに連絡があるのに気付いた。誰だろうと画面を見ると
「藤代?」
同じクラスの藤代麻奈から連絡があった。藤代とは席が隣でそこそこ話す関係だ。真面目で多少細かい所はあるが、友達思いな性格だ。一体どうしたのか。学校をサボった事だろうか。
藤代に電話を掛ける。呼び出し音が1秒。2秒。
『はい。藤代です』
「汐見です。藤代どうし―」
『このサボり魔!何をサボっ―』
プツ。面倒な気配がしたので即切り。すると、即掛かってくる。仕方ない。
「…何ですか?」
『汐見〜!ぶつ切りしてんじゃないわよ!何学校サボって女とイチャついてんのよ!というか、アンタ無事なら無事と連絡しなさいよ!』
「無事?何がだ?」
『アンタ知らないの?一年四組の田中
「休校?」
確かに火傷が酷かったが、それだけで休校になるものだろうか。
『爆弾か何かあるんじゃないかって大騒ぎになって突然決まったらしいわ。それぐらい酷い火傷って聞いたけど』
「…そう、なんだ」
言えない。せーちゃんの呪いが原因だと。
『ユズも心配してたんだからね。明日謝っておきなさいよ』
ユズこと、有村結弦は俺の親友である。温和な性格で男女ともに好かれやすい。藤代と結弦はいわゆる幼馴染で幼稚園からの付き合いだそうだ。
「ああ。ごめんな。心配かけて」
『全くよ。こっちが心配しているのに、女とイチャコラしてんじゃないわよ。ていうかあの女子は誰よ?アンタって彼女いたの?初めて知ったんだけど』
「せーちゃん、セシリーは俺の妻だ。今日婚約した」
『は?』
「また明日報告する。じゃあな」
『は、ちょ、待ちなさ―』
プツ。藤代が何か言う前に電話を切った。鬼電されそうなので電源も切っておく。これは明日大変だな。
「えい!」
「お?」
「ギューッ」
せーちゃんが後ろから抱きついてきた。背中に何か柔らかい物が乗っている。これは…素晴らしい…。
「…ミナくんのばーか」
「いきなりどうしたんだ?」
「ふんっだ!ミナくんが他の女の子と楽しそうに話しているのが悪いんだもん。ばか、ばか、ばーか!」
せーちゃんは頬を膨らませていた。プンプンと怒っている。ふむ。これは嫉妬かな。
「ごめんな。学校に来ていない俺を心配してたみたいなんだ」
「それは、…私のせいだよね。ごめん」
せーちゃんはシュンとしてしまった。そっと頭を撫でる。
「ミナくん?」
「俺がここにいるのは、俺自身がせーちゃんと居たいと思ったからだよ。せーちゃんのせいじゃない」
「でも、ミナくん…」
「それに、俺はせーちゃんと居られて幸せだよ。だからそんな顔をしないでくれ」
「ミナくん…」
せーちゃんがじっと俺を見つめる。そして、笑顔が戻る。
「ミナくん大好き!」
「ありがとう。俺もだよ」
「えへへ。それじゃあご飯を食べようよ!自信作だよ!」
「それは楽しみだ」
二人揃ってテーブルの近くに座る。テーブルの上の皿にはカレーが盛り付けられている。いい香りだ。二人手を合わせる。
「それじゃミナくん」
「ああ」
「「いただきます」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます