第12話 嫁と買い物

「お買い物〜♪ミナくんとお買い物〜♪」


 せーちゃんは上機嫌に歌いながら俺の手を握っている。いわゆる恋人繋ぎだ。ニコニコと満面の笑みだ。買い物に行くだけでこんなに喜んでくれるのが嬉しいような、恥ずかしいような半々である。


「悪いな。買い物に付き合って貰って」


「ううん。気にしないで。ミナくんとこうして買い物に行きたかったんだ〜♪」


「それなら良かったよ」


「うん!あ、でもミナく〜ん?流石にあの冷蔵庫の中身は無いと思うな〜」


「うっ…。すみません…」


「もう、冷蔵庫の中にもやししか無かったじゃない!ダメだよ?ちゃんと栄養があるご飯を食べないと!」


「はい…」


 そう。冷蔵庫の中にもやししか無かったのだ。食材を使い切っていた事を忘れていた…。せーちゃんにめっ!ってされた。完全に子供扱いである。ズボラな俺が悪いです。はい。


「やっぱりミナくんは私が管理しないとダメかな?かな?」


「まだダメ人間になるつもりはありませんので」


「え〜私が全部やってあげるよ?」


「大丈夫です。頑張ります」


「残念。また今度ね」


 そんなやり取りをしていると近所のスーパー『スーパーMINAKAMI』に到着した。結構安いスーパーで俺もよく利用している。


「ところで、何を買うの?」


「う〜ん。今日はミナくんの好きな物にしようかな。カレーとオムライスとハンバーグどれがいい?」


「今日はカレーが食べたいかな」


「オッケー。じゃあカレーのルーと、にんじん、じゃがいも、玉ねぎ、豚肉かな。後入れたい具材はある?」


「納豆でいいですか?」


 納豆を入れたカレー美味いと思うんだけど、友人には不評だ。合わないと思われているらしい。せーちゃんはどうかな。魔界に納豆ってあるのかな。納豆が苦手な人も多いし、あまり無理に食べてとは言えないかな。


「納豆か〜。食べた事無いなぁ。あれって美味しいの?」


「俺は美味いと思うよ。ただ、人に勧められるかと言えば微妙かなぁ。納豆って癖が強い食べ物だし」


「う〜ん。ミナくんが美味しいと言うなら食べてみようかな」


「あまり無理しないでね。好き嫌い別れる食べ物だし。食べられないようなら残していいから」


「ミナくんがそう言うなら分かったよ。無理はしない。でもミナくんの好きな物や嫌いな物全部知りたいんだ。ミナくんが好きな物は私も好きになりたいから」


「そう言ってくれるのは嬉しいけど、無理に合わせようとしなくていいよ。せーちゃんはせーちゃんのままが一番素敵だし」


「えへ、えへへ…。やっぱりミナくんは優しいね。好き!」


 せーちゃんが抱きついてきた。周りの生温かい視線が気になるが気にしないようにしよう。


「俺も好きだよ。それじゃあそろそろ会計に行こう」


「そうだね。いつの間にか食材が集まってたね。ミナくんと話しているとあっという間だよ」


こうしてスーパーを後にする俺達。その後ろで


「…汐見?アイツ学校サボってなに女とイチャついてんのよ…」


俺達を見つめる女子がいる事には気付いていなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る