第10話 嫁と学校

「そう言えばミナくん。気になっていたけど学校は大丈夫なの?」


「ん〜。大丈夫とは言えないけど、まぁ一日ぐらいならサボっても問題無いだろ。多分」


「あ〜いけないんだ〜。悪い子だ〜。ミナくんが不良になっちゃった〜」


「というか、それどころでは無いと思うよ」


「というと?」


「俺ら、というかせーちゃんに絡んできたアイツ等あれうちの生徒だよ。その生徒が大火傷したんだから大騒ぎになっていると思う」


「あの人達生徒なの?何と言うかとても高校生には見えなかったというか」


「制服の胸ポケットに赤色で名前書いてただろ?赤色は一年生だよ」


「まさかのミナくんと同級生。十年ぐらい留年しているんじゃなくて?」


「いや、多分俺と同い年かな。いつの時代を生きているんだろうな」


「そっか〜。世の中にはまだ不思議な事もあるんだね」


 そんな他愛の無い話をしているとせーちゃんが俺の手を握る。ニギニギしている。何だろうか?


「せーちゃん?」


「私ね、この呪いがあるから、家族とミナくん以外に触れられないんだ」


「…そうだな」


「本当はミナくんと同じ学校に通いたかったんだ。一緒に登校して、勉強して、お昼ご飯を食べて、放課後は部活動をして、ミナくんと学校生活をしたかった」


「……」


 せーちゃんの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。せーちゃんの手を握り返す。強く、せーちゃんを離さないように。


「私が学校に行くと皆に迷惑が掛かっちゃう。ちょっと触れただけでも燃やしちゃうからミナくんと一緒に学校は行けないね…」


「せーちゃん…」


 何故彼女が辛い思いをしなければいけない?何故彼女が泣いている?こんな状況になったのは誰のせいだ?


 怒りが湧いて来る。せーちゃんに呪いを掛けたあのフード男に。既に死んでいるので二度と会えないが、仮に会えば殺してやりたくなる。そして、それ以上に自分に怒りが湧いた。不甲斐無い自分、何も出来ない自分に対しての強い怒りが。


「ねぇせーちゃん」


「何かな」


「俺にちょっとした目標が出来たんだけど聞いてくれるか?」


「?うん」


「俺はせーちゃんと学校生活を送りたいんだ。さっきせーちゃんが言ってた事は俺もやりたい事なんだ。だからさ」



「俺がせーちゃんの呪いを解く。強くなるよ。せーちゃんを守れるように」


「ミナ、くん…」


「学校生活だけじゃなくて、それから先もせーちゃんが二度と悲しまないように強くなるって約束する」


「でも、ミナくんに迷惑が…」


「迷惑じゃない。むしろ背負わせてくれ。せーちゃんの側に居たいんだ」


「あうぅ…ミナくんは、ずるいよ…。そんな真剣な表情で言われたら、私…ミナくんに寄りかかっちゃうよ?良いの?」


「どんと来い」


「私はミナくんを永遠に離すつもりは無いよ?それでも良い?」


「俺もせーちゃんを離すつもりは無いよ。ずっと一緒だ」


「はうぅ…もう!ミナくん!何処まで私を好きにさせれば気が済むの!好き!大好き!愛してる!結婚して!」


「俺も好きだよ。一緒に乗り越えよう」


「うん!」


 せーちゃんが笑ってくれた。花のような眩しい笑顔。俺の好きな笑顔だ。


目標は決まった。せーちゃんの呪いを解く。これが最優先事項だ。たとえ全てを敵に回したとしても。

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