第9話 膝枕と魔法
「う、ううん…ここは…」
「あ、ミナくん、おはよ。良く眠れた?」
「せーちゃん…?俺は、一体…」
そこで気付く。せーちゃんを下から見上げる姿勢である事。後頭部に感じる柔らかさと温もりを。これはもしや
「膝枕、ですか?」
何故か敬語になる俺。せーちゃんはニッコリ笑う。
「えへへ、一度やってみたかったんだ〜。私の太ももどうかな?」
「最高」
語彙力など吹き飛んでいた。程よい弾力と優しい温もりとせーちゃんの良い香りが俺を天国へと連れて行く。…何故かは言わないがせーちゃんの顔が半分しか見えない。何故かは言わないが。
「えへへ、ありがとう。くすぐったいけど良いねこれ」
「こちらこそ、ありがとうだよ。いや、ごちそうさまです?」
「もう、ミナくんのえっち…。お外では恥ずかしいから今度はお家の中でね」
「ありがとうございます!」
ありがとうBOTに成りかけている俺。語彙力が帰ってこない。そこでふと気付く。
「あれ、そう言えば何で俺、無事なんだ?燃えた、よね?」
「それはね、ミナくんは私の物になったからだよ」
「せーちゃんの物?」
どう言う事だろうか。既に俺はせーちゃんのモノでは?我ながらせーちゃんしか頭に無いなと思う。ふむ。何も問題は無いな。うん。
「ミナくんは私の眷属になったの。だから燃えないんだよ」
◆◇◆
「なるほど、家族には効かないんだあの呪い」
「びっくりだよね。私も気付いた時は驚いたよ」
「本当だよ。という事は、せーちゃんの眷属というのはある意味家族に当たるのか」
「みたいだね〜。ミナくんが私の家族。うふふふ…」
せーちゃんが嬉しそうに笑う。それはとても良い事だ。ただ、気になる事がいくつか。
「…ちなみに、俺、転生したって本当?」
「本当だよ。
「うん。でもどうやって?」
「片手を前に出して念じてみて。魔法が使えるよ」
「魔法!念じるって何を?」
「ん〜。ミナくんは水と闇が得意な属性みたいだから、水よ出ろ、みたいな」
「『水よ出ろ』…!うわっ!指先から水が…」
水道の蛇口を捻った様に、人差し指から水が流れ出てくる。ポタポタからジャーッと勢いが強くなる。
「ど、どうやって止めるの?」
「もう一度念じてみて。次は水よ止まれって」
「『水よ止まれ』…止まった」
本当に魔法を使ってしまった。年頃の男子としてはテンション爆上がりである。
「せーちゃん、せーちゃん!俺、俺魔法が使えた!やった!」
「うふふ。もうミナくん可愛すぎ。魔法が使えたのがそんなに嬉しいの?」
「当たり前だよ!」
「うふふ。じゃあ私が魔法の使い方を教えてあげる」
「本当!?ありがとうせーちゃん!」
「はぅぅ!満面の笑みの破壊力が凄まじいよ。ミナくん…濡れちゃう…」
何故か胸を抑えて恍惚とした表情のせーちゃん。太ももをモジモジと擦り合わせているのはどうして?息が荒いのは何故?
こうして、俺の眷属ライフが始まったのであった。
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