第8話 契りと永遠(セシリア視点)
「えへへ、ミナくん可愛い…」
今私はミナくんを膝枕している。そう!膝枕が出来たのだ!呪いのせいでこの先ずっとミナくんに触れる事が出来ないと思った時の絶望感は言葉で言い表せない。目の前が真っ暗になって、世界に希望など見いだせなかった。だが、今は違う。ミナくんに触れる。抱きつける。大人のキスだって、その先だって…。うふ、うふふ、うふふふ…。妄想が止まらない。世界が光輝いて見える。
「上手くいったよ。サラおばさん、イフおじさん」
火の鍛錬に付き合ってくれた火の龍神夫婦には感謝してもしきれない。あの二人が居なければ、私は今でも世界に絶望していただろう。
きっかけはとある気付きだった。私に掛かっている呪い『発火ノ呪』の特性だ。この呪いは触れた者を全て焼き尽くす。これが前提だ。人間はおろか、魔族ですら焼き尽くす程の火。だが、一つだけ普通の火とは違う所がある。それは
「私や私に近い人は燃やさないんだよね」
そう、この呪いは私に関係が深い者には火がつかない特性がある。例えば、家族。血の繋がりのあるからか、この呪いが不完全だからか、私の家族は触れても何も起こらなかったのだ。弟のアルくんが指先で触れてきた時に何も起こらない事に気付く。お父さんやお母さんにも触れてもらい、火がつかない事は証明済みだ。
だから、この計画を立てた。とはいえ、上手く行くかどうか不安だった。上手く行かなかった時の保険として火の鍛錬と火傷を治す治癒魔法に全力を注いできた。良かった。上手く行った。その計画とは
「ミナくんを私の眷属にしてしまえば良かったんだね。これでミナくんは私のモノ。最初から気付いていればなぁ。まぁ、いっか。これからはミナくんと一緒にいられるんだから。うふふ」
眷属とは、魔人族特有の能力であり、人間を自身の従僕として転生させる事が出来る。転生先は二つに一つ。魔法が得意な
従僕と言っても様々で、心まで支配して完全に奴隷とするか、ある程度の緩い縛りで自由にさせるか、それは主である魔人次第である。私は後者だ。ミナくんの全てを支配したいという気持ちと、ミナくん自身の心が大切だと思う気持ちを天秤にかけ、後者を選択した。結果的に成功だ。
「ミナくんは
眷属を作る際の条件は二つ。一つは対象の人間の承諾を得る事。もう一つは対象が主となる魔人に触れる事。
「えへへ…ミナくんにキスされちゃった…。気持ち良過ぎて、頭ふわふわして、何も考えられなくなって…もう一度したいなぁ…。ちょっとはしたないかな?でもいいよねミナくん」
眠っているミナくんの髪を撫でる。サラサラだ。それに
「可愛いなぁ。ミナくんの寝顔。写真撮っちゃダメかな」
十年越しに出会った彼は背が高くなり、逞しい身体になり、大人っぽくなり、予想以上に格好良くなっていた。でも寝顔はあの頃のまま。あどけない表情だ。リラックス出来ているみたい。変わった物と変わらない物。ミナくんはその両方ある。それが嬉しい。
「ねぇ、ミナくん。私ね、十年も頑張ったんだよ?ミナくんの為に頑張ったんだよ?だからね」
「これからはずっと、ずっっっと一緒だからね?永遠に、永遠の向こうでも。何度生まれ変わったとしても私はミナくんを探すからね」
もう二度と離れないでね。私も離さないから。
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