第6話 過去と回想④

「せーちゃん!」


不気味な霧に包まれたせーちゃんを助ける為に走って駆け寄る。


霧が晴れるとせーちゃんは座りこんでいた。見たところ怪我はないようだ。無事で良かった。


「せーちゃん、だいじょうぶ?」


「……」


「せーちゃん?」


「…ミナくん…」


せーちゃんの様子がおかしい。顔色が悪いし、泣きそうな表情だ。


「せーちゃん、どうし―」


「!ダメ!」


近づいたらせーちゃんが叫んだ。え?何かしたっけ?せーちゃんにこんなに拒まれたのは初めてでびっくりした。


「え?何で?」


「私に近づいたらダメ!ミナくんが危ないから…」


せーちゃんが距離を取るように後ずさる。危ないって何が危ないのだろうか。


「せーちゃんはあぶなくないよ。だいじょうぶだよ」


「来ちゃダメ…ミナくんお願い…」


「え」


せーちゃんは泣いていた。どうして、どうして泣くんだ。何かしてしまったのだろうか。


「せーちゃん、ぼくがせーちゃんをきずつけたの?だったらごめん。あやまるから、だから、なかないで…」


「違うの!ミナくんは悪くない!あいつが掛けた呪いのせいなの…これは触った者を燃やし尽くす呪いなの…触れたら燃えてしまうの…」


「あいつの、のろい?」


フード男がどうやら原因らしい。触ったら燃える。そんなの…。そこでふと気付いた。さっきの薔薇モドキが一匹せーちゃんの後ろにいた事を。どうやら、最初にせーちゃんが吹き飛ばした奴らしい。


「せーちゃんうしろ!」


「あ!きゃっ!」


「キシャアアア!!」


せーちゃんが咄嗟に手を振り上げると


「!!!ギジャアアアアアアアアア!!!ジャアァァァ…」


「もえた…せーちゃんにさわっただけで」


薔薇モドキはせーちゃんに触れただけで、灰になってしまった。せーちゃんの言ってた事は本当なんだ。


「…こういう事なの…。だからミナくんは近づいちゃダメ…」


「…じ、じゃあせーちゃんにさわれないの?これからずっと?そんなのいやだよ…」


せーちゃんに触れない。これからずっと。そう考えただけで泣きそうだ。いや、泣いていた。


「…私も、私も嫌…。ミナくんに触れないなんて絶対に嫌ぁ!うわぁ~ん!ミナくんに触りたいよ〜!」


せーちゃんが泣き叫ぶ。どうしよう。どうすればいい。どうすればせーちゃんを助けられるんだ。


「なにかほうほうは、ないの?」


思い付かなくてせーちゃんに丸投げだ。こんな自分が嫌になる。


「…ひっぐ…グス…私が、炎の、扱い方を、今よりも、上手くなれば、多分、いける、と思う…」


せーちゃんがしゃくり上げながら答えてくれる。どうやら、まだ希望はあるみたいだ。


「じゃ、じゃあ」


「でも、その間ミナくんとお別れになっちゃう…。嫌だけど、でも、こうするしか…」


「ど、どうして?ぼくのちかくでれんしゅうすればいいじゃないか」


そう提案してみるが、せーちゃんは首を横に振る。


「人間界だと、ミナくんに迷惑がかかっちゃう。だから、ダメ…」


「めいわくなんかじゃないよ!ぼくのそばにいてよ!」


「ダメ、ダメだよ。もう、これしか方法はないんだよ。だから、ミナくん」



「さようなら。また会おうね」


「せーちゃん!」


必死に手を伸ばす。触れれば燃えてしまう。でも、そんなのどうでもいい!せーちゃんとお別れになる方が嫌だ!


「ごめんねミナくん。私の事を『忘れて』」


せーちゃんが呟くと同時に意識が遠のいていく。


「せー、ちゃん…」


「ミナくん。私が呪いを克服出来たらまた会おうね。その時は、私を…」



「私をお嫁さんにしてね」

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