第5話 過去と回想③

アランと名乗ったフードの男はゆっくりと近づいて来る。よく分からなかったが、せーちゃんが危ないと気付き、せーちゃんを守る為に前に出る。


「せーちゃんにちかづくな!」


「そこをどいてもらおうか。お前に用はない」


「ふざけるな!せーちゃんになにをするつもりだ!」


「ふむ。面倒だな」


「なに、がぁ!」


「ミナくん!」


気が付けば吹き飛ばされていた。地面に叩きつけられ、呼吸が一瞬止まる。咳き込みながらフード男を睨み付ける。


「ガキを殺して喜ぶ趣味はない。大人しく寝ていろ」


「ふざけ、あぐぅ!」


「ミナくんもうやめて!」


再び吹き飛ばされる。せーちゃんが泣きそうな表情を浮かべている。そんな表情をさせてしまった事が申し訳ない。


「せーちゃんはおまえなんかにわたさない!」


「力の差も分からないのか」


「うるさい!うがっ!」


「そもそも、何故この娘を守る。コイツは魔人。人間ではない。人間とは遥かにかけ離れた存在だ。お前の事など虫ケラだと思ってるんじゃないか?」


「そんな事ない!ミナくんは私にとって大切な存在だ!」


「魔人が人間を大切に?笑止。奴隷の間違いだろう?」


「ふざけ…!」


「それがなに?」


「え?ミナくん?」


「せーちゃんが『まじん』でもなんでもいい。ぼくのことをどうおもっていてもいいよ。でも、ぼくにとってせーちゃんはたいせつなともだちだ!だからまもるんだ!」


「ミナくん…」


「全く、本当に面倒だな」


「せーちゃんはぼくがまもるよ。だから、なかないで」


「ヤレヤレ。殺しは好まないが、致し方ない。せめて苦しまぬ様に一撃で終わらせてやる」


「…!」


「ミナくん!」


フード男の圧が強くなった。押し潰されそうになるのを必死に耐える。せーちゃんが入れ替わるように前に出る。


「『巻き潰せ』」


「『燃えろ』!」


フード男からは竜巻が。せーちゃんからは巨大な炎の塊が。激突し、周囲に熱風が吹き荒れる。


「うぅ…!」


「…ぐっ!流石ベルガンドの娘だ。この魔法と拮抗するとは」


「ミナくんを傷付けたお前は許さない!絶対に倒す!」


「出来るものならやってみろ」


二人の力は互角。そして、フード男はこちらをみていない。ならば


「おりゃああ!」


「がっ!こ、このガキ…!しまっ…ぎゃああ!!」


急所に思い切り頭突きをする。男の急所となる局部こかんを。


怯んだ隙にせーちゃんの炎が竜巻を呑み込み、フード男を燃やし尽くす。フード男が灰になる直前、何かを呟いていた。


「ぐっ!やはり、ベルガンドの一族には、敵わない、か…。だが、せめてこの娘に、呪いを…!誰にも触れる事は出来ず、孤独に生きる呪いを!『発火ノ呪』!」


「え?」


「せーちゃん!」


せーちゃんの身体を不気味な色の霧が包み込んだ。

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