第3話 過去と回想①
10年前
「いっしょにあそぼ!」
「うん!」
よく遊ぶ少女がいた。長い銀髪で歳は俺と同年齢か年上だと思う。
出会いは何気ないもの。近所の公園で藤の名所である「藤棚公園」で一人ぼっちでブランコを漕いでいた少女に話し掛けたのがきっかけだ。
「ねぇ、なにしてるの?」
「ブランコ…」
「じゃあ、ぼくもやる!」
「え?うん」
「ぼくは『しおみみなと』おねーちゃんは?」
「私は『セシリア・ローズ・ベルガンド』だよ」
「じゃあ、せーちゃんで。よろしくせーちゃん」
「うん。じゃあミナくんって呼んでいい?」
「もちろん!」
そんな感じで二人でよく会うことになった。そんなある日。せーちゃんはしょんぼりしていた。
「せーちゃんどーしたの?」
「勉強でママに叱られちゃったの…」
「そーなんだ。じゃあ、えい!」
「ひゃっ!どうして抱きつくの?」
「おかーさんがいってた。つらいことがあったときは、ハグすればいいって。おともだちにもおしえてあげなさいって」
「あうぅ…恥ずかしい。でも、落ち着く…。気持ちいい…そっか、これは…私と…」
「?おねーちゃん?」
「ううん…なんでもない。…ミナくん。また、こうしてハグしてくれる?」
「もちろん!」
それから更に仲良くなり一緒に公園で遊んだ。ブランコや滑り台、ジャングルジム。近くの川や森にも一緒に行った。
そんなある日のこと。いつものようにせーちゃんと遊んでいると、ちょっとした事件が起こった。森の中で迷子になってしまったのだ。大人なら普通に歩いても十分で出られるような小さな森だが、子供であった俺達には大きな森だったのだ。
「う〜やっちゃった…」
「なかないで。ぼくがいるから」
泣きそうなせーちゃんの頭を撫でて慰めていると、ふと、聞き慣れない音が聞こえる。耳を澄ましてみると
『こっち、こっちだよ』
『おいで、こっちにおいで』
人の声だった。でも不思議だった。何故なら森のあちこちから聞こえるのだ。周囲を飛び回っているかのように。
「なんかこえがきこえる」
声がする方向に進もうとすると、せーちゃんが慌てた様子で止めてくる。
「だ、ダメ!そっちに行っちゃダメ!」
「どーして?」
「あれは…
「?いびるろーず?」
「人を食べちゃうバラだよ。でもなんで?魔界にしかないはずなのに…」
「まかい?」
「私の住んでる場所だよ」
「そうなんだ。あれ?ねぇせーちゃんあれなに?」
「え?…あ、危ない!」
せーちゃんに抱き寄せられる。すると俺がいた場所に巨大な薔薇の様な何かがあった。
「キシャアアアアア!」
「えい!」
せーちゃんが叫ぶと薔薇モドキが吹き飛んだ。そのまませーちゃんに手を引かれる。
「ミナくん!こっち!」
「う、うん。分かった」
「キシャアアアアア!」
「キシャアアアアア!」
「キシャアアアアア!」
そこら中から薔薇モドキが生えてきた。俺達は必死に逃げる。途中に隠れられそうな茂みに二人で息を潜める。
「(どうしよう…)」
「(あいつらがいなくなるまでここでいよう)」
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