第2話 魔力と呪い
「所でセシリーは俺の何処を好きになってくれたんだ?」
「そうですね。一目惚れに近いのですが、強いて言うなら魔力ですね」
「魔力?俺にあるのか?」
「人間にも魔力はありますよ。使い方を知る人間が少ないだけで。魔族というか魔人族は魔力で相性を確かめるんです。旦那様の魔力を見た時ビビッと、そしてズギューンときました。旦那様が運命の方だと。10年前からずっと…旦那様を…」
「10年前?すまない。俺は何処かで出会ったのを忘れているのか?」
こんな美少女を忘れるとは思えないが、尋ねてみる。するとセシリーは慌てて首を横に振る。
「あ、いえいえ、こちらの話ですから」
「ん、そうか。分かった」
セシリーが話したくない事ならば無理に聞くつもりは無い。次の話題に移ろう。
「どうしてそんなに距離を取るんだ?…もしかして俺臭うか?」
セシリーと俺の距離は約1m。恋人の距離ではないと思う。ちゃんと風呂は毎日入っているし、服も洗濯している。それでも臭いなら対策を考える必要がある。…好きだと言ってくれたセシリーにそう思われているなら凄くショックだ。
「違います!むしろ旦那様はいい香りがするからもっと近づきたいんです!抱き着いてクンカクンカスーハースーハーしたいんです!」
「お、おう。なら何故?」
「それは…」
セシリーが言い淀む。言い辛い事なんだろうか?なら、また別の話題に―
「ウェ〜イ。そこのチャンネーマブイね〜。俺ッち達とウェイウェイしな〜い?」
いつの時代を生きているのか分からないチャラ男✕3が現れた。今年西暦何年だと思ってんだ。誘い方にしても、もう少し何かあるだろ。
内心突っ込みながらセシリーを守ろうと前に出る。こんな見た目だ。多少の荒事は経験している。
「いいだろ〜。チャンネーウェーイしようぜ〜」
「ひゃっ、触らないで…」
「汚い手でセシリーに触れるな」
「あぎゃああー!!痛いよママー!」
セシリーの腕を掴もうとするチャラ男Aの腕を捻り上げる。見た目に反して気弱らしく腕を振り払おうと泣き言を叫ぶ。そのまま校門に叩き付けると静かになった。
「グヘヘ!チャンネー、グヘヘヘ…ヒデブ!」
ドサクサに紛れて近付こうとするチャラ男Bに回し蹴りを見舞う。こめかみに突き刺さり、泡を吹いて倒れる。
「隙ありー!ウェーイ!…アベシ!」
「セシリーに触れるなって言ってんだろうが」
振り向き様にチャラ男Cの鼻先に裏拳を叩き込む。ペキョッと何かが砕けた感覚が手の甲に伝わる。鼻の骨が折れたか。
「オゴゴゴ、チャンネー…」
「しつこいな」
それでもセシリーの腕を掴もうとするチャラ男C。蹴り飛ばそうと近付くも、僅かに指先がセシリーの腕に触れてしまった。
「あ」
「え?」
瞬間、チャラ男Cは火に包まれていた。
「オギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!熱い!熱い!!助けてー!!」
「…!おい、大丈夫か!」
咄嗟に脱いだ上着で叩き火をもみ消す。メラメラと燃える炎は勢いを失わず、燃え盛っている。このままでは焼け死ぬだろう。目の前で死なれるのは流石に気分が悪い。
「…!き、『消えて』!」
セシリーが叫ぶと嘘のように火が消えた。チャラ男Cは全身大火傷だがまだ生きてる。救急車を呼び、セシリーと共にその場を離れる。近くの公園「岸川原第三公園」のベンチに二人で座る。遊具はブランコしかない小さめな公園で
「セシリー大丈夫か?」
「は、はい。何とか…」
「そっか。なら良かった」
「はい…。その、あれは…あれは私のせいなんです…」
「どういう事だ?」
「はい…。旦那様に近付けない理由は、さっきの炎が原因なんです」
「あれは一体…」
「呪いです」
セシリーは悲痛そうに顔を歪める。そして語り始めた。
「触れる者全てを燃やしてしまう呪いなんです。…10年前のあの日からずっと」
俺が忘れてしまった10年前の事を。
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