第2話 奏汰は部活に入りたい

「あ、え、もしかして」

「もしかして、帰宅部の入部希望かな!?ようこそ我が帰宅部へ!」…そこで『我が帰宅部』と言えるのにはもはや尊敬の念すら覚えてしまう。そんな千釣の様子を見て、彼は少し怯えたように縮こまって答える。

「は、はい…僕、ここの部活入りたくて…」

…まさか、こんなに早く部員が集まるとは思わなかった。帰宅部にそこまで需要があるのかと内心驚きを隠せない私を他所に、会話はどんどん進んでいく。

「入部届は水瀬先生から貰ってる?」

「は、はい。もう貰ってきてます」

「入部を希望した理由は?」

「えっと、他の部活はなんだか全部ふわっとしてて…でも、あのポスター見て、凄いやることがはっきりしてるって言うか…こんな人がいる部活なら入ってみたいと思って」まるで採用試験のような問答が続いている。このままじゃ埒が明かないと思った私は、健気に質問に答え続ける彼に声を掛けた。

「えーと、新入生くん、名前は?」

「え、えと、高梨たかなし 奏汰かなたです…」

「高梨くんね。改めて、帰宅部へようこそ。今日部長になることを知らされた部長の、橘 芹夏です」

「副部長の、海瑞 千釣でーす。よろしくねー」

「あ、はい。よろしくお願いします」

「じゃあ、3人集まった事だし、水瀬先生の所に行こうか」


こうして、多分どこよりも下らなくて、でもどこよりも濃いであろう、帰宅部の1年が始まったのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る