その②
◇ ◇ ◇
夕食後。私は弟子を取ることになった経緯をアリサさんに話しました。私の横に座るサラちゃんは一回り違う年上の採集者さんを前に緊張しきった様子。ウチに来たばかりに頃みたいに固くなっています。
「なるほど。リリア殿の紹介なのか」
「はい。新人ですけど腕前は十分ですよ」
「ソフィー殿がそう言うなら間違いないのだろうが……」
「あ、えっと。その……」
じっと自分を見つめるアリサさんを前に委縮するサラちゃんはどうすれば良いのか分からず、私を見つめて助けを求めてきます。初めて会った時もそうだったけど、やっぱり気弱と言うか人見知りなのかもしれないね。
「サラと言ったか」
「は、はい」
「ソフィー殿は確かに薬師としての腕は間違いない。しかし中身はまだ子供だ」
「ちょ、ちょっとアリサさん⁉」
「だがアタシは誰よりもソフィー殿を信頼している。なにより大事な友人だ。サラ殿も師弟関係だけに留まらずソフィー殿を支えて欲しい」
「アリサさん! 私のどこが子供なんですか⁉」
「そういうとこだ。ソフィー」
プぅと頬を膨らます私に同情すらしてくれないのはエド。さり気なくアリサさんのティーカップにお茶のお替りを注ぎ、サラちゃんにもお替りを尋ねる姿にさらに頬を膨らませます。
「まったく。エドと結婚してからソフィー殿の甘え癖は酷くなったな」
「これは妻の特権です」
「なにが特権だ――分かったからそんな怖い顔するな。それで今回は何時までこっちに?」
「ああ。そのことだが、ソフィー殿」
「なんですか」
「またこの店で雇ってもらえないだろうか」
「え?」
申し訳なさそうに私を見るアリサさんは無理ならそれで構わないと付け足します。ウチの経営状態では何人も雇えないことくらいアリサさんも知っています。でも――
「アリサさんってお休みを取ってるだけですよね?」
「た、確かにそうだが、それはソフィー殿が気を利かせて――」
「退職願、まだ受け取ってないですよ?」
あの時、アリサさんはリズさんとの夢を叶える為にもう一度旅に出たいと言いました。それはウチを辞めることを意味していましたが私は卑怯な手を使ったと言うべきか、アリサさんが戻ってきた時の為に専属採集者という肩書は残したままにしていました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます