第5話 ウチの採集者さん
その①
それはある日の午後のことです。
「ソフィーさん、お客さんが来てますよ」
往診から戻り、診察室に入った私をそう言って出迎えるサラちゃんは住居スペースと診察室を仕切る扉を指さしました。
「エドさんから『リビングに通せ』って言われたので奥へ案内しました」
「ありがと。エドもリビング?」
「はい。すごく綺麗な人でした」
「綺麗?」
「もしかしてお知り合いですか?」
「たぶんね。店番お願い出来る?」
「もちろんですっ」
「ありがと。患者さんが来たら遠慮なく呼んでね」
往診かばんを棚に仕舞う私はそのまま住居スペースへ入り、リビングに向かいます。エドが迷わずリビングに通したってことは私の知り合いってことだよね。と言うことは――
(アリサさんかな)
リリアさんが来ているならそう言うだろうし、他に思い当たる人物がいません。
――そうなんですか。
――ああ。だから……
――そうですね。
廊下の奥。リビングの方から聞こえるのは男女の楽しそうな話声。男の人は間違えるはずのないエドの声、女性の方声にも聞き覚えがあります。こちらも聞き間違える訳ない大好きな声です。
(やっぱりそうだ!)
聞き慣れた声に逸る気持ちを抑え、出来るだけ平常心を保ったまま廊下を進み、突き当りを左に曲がってすぐ。右手にあるドアのノブに手を掛けると大きく深呼吸しました。
「お待たせしました。薬師の――やっぱり!」
接客モードでリビングに入る私でしたが、その顔を見た途端、薬師のソフィアは何処かに行ってしまいました。
「アリサさん久しぶりですっ」
「久しぶりだな。ソフィー殿。一年振り、かな?」
「そうですね。全然顔見せないから心配してたんですよ。エドが」
「俺かよっ⁉」
急に話を振られたエドは「おまえも心配してただろ!」と反論します。なんだかこの感じも久しぶりだな。
「二人は相変わらずのようだな」
「はい。仲良くやってますよ」
「そうか。ところで、店にいたのは――」
「サラちゃんですか? 私の弟子です」
「……弟子? ソフィー殿、弟子を取ったのか」
「はい。2カ月ほど前です」
キョトンとするアリサさんに事情を説明したいところだけど、そろそろお昼寝中のルークを起こす時間です。話はそのあと。サラちゃんも交えてみんなで夕ご飯を食べてる時にしようかな。
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