その③
◇ ◇ ◇
「ソフィーさん凄いですっ。薬師なのに外科処置も出来るんですね!」
「あのくらい出来ないと村で薬師はやってられないよ」
「それでも凄いです!」
処置を終えてバートさんを帰宅させたあと。興奮冷め止まぬ感じのサラちゃんは術式を教えて欲しいと頼んできました。
「私もソフィーさんみたいに外科処置が出来るようになりたいですっ」
「うーん。その意気込みは良いと思うよ」
「ダメ、ですか」
「あれは本来、薬師の仕事じゃない。だよね?」
「それは……」
「まずは薬師の本業がしっかり出来るようになること。それが最優先。医術を覚えるのはそのあとだよ」
「……わかりました」
先輩として当然のことを言っただけ。それなのにしょんぼりするサラちゃんを見ていると自分が“規格外”の薬師なんだと改めて自覚させられます。
「あの、ソフィーさん」
「なに?」
「その……ごめんなさい」
「どうしたの急に」
「なんだかソフィーさん悲しそうな顔してたから、その……」
「気にしないで。サラちゃんのせいじゃないから」
「でも……」
「大丈夫だから。ね? さ、さっさと片付けちゃお」
申し訳なさそうに下を向く後輩に笑顔を向ける私は中断していた後片付けを再開します。
(ほんとは教えても良いんだけどね)
小さな村の薬師ならあのくらいの処置は出来て当然。私は師匠からそう教わりました。私もその考えには賛成だし、サラちゃんにもそうなって欲しいと思っています。けれどその前に薬師としての基礎をしっかり身に着けて欲しい。先輩として、彼女の師匠としてそこは譲れません。
(薬師の基本は調薬。医術はそのあとだよ)
洗浄した器具を棚に仕舞いながらそんなことを思う私はチラッとサラちゃんを見ました。どうやらバートさんのカルテを仕上げているみたい。それにしてもすごく真剣な目をしているな。
(そっか。術式のヒントを探してるんだ)
要点は私が書いたからあとはそれを元に清書するだけで良いはずだけど、たぶん私のメモから術式の手順を学ぼうとしてるんだ。。
(私も負けてられないね)
知識も技術もサラちゃんに追い抜かれるつもりはありません。それでも些細なことも逃さず、全てを知識にしたいと言うサラちゃんを見ていると私も負けてられない、そう感じるのでした。
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